それは、もうすぐ8歳になる、

夏島での出来事だったと記憶している。




「お嬢ちゃん、林檎はいかがだね?」

「髪飾りもあるよ?」

「このワンピースなんてどうだい」

「親父!それ買いだ!」

「まいど!!」

「買うなあ!!」




もうすぐ8歳になると言うのに、

女に間違われるのはどうなのだろうか。

白いワンピースをうきうき買い込んでいる彼奴も彼奴だが。




「ベック、おれ、そんなに女っぽいかな」

「可愛いのは確かだ」




むっすうと、ほっぺを膨らますその仕草が、

可愛いと言うことだと、

多分、自身も気付いていないのだろう。

あまりにも子供でいすぎた所為で。




「でもまあ、声変わりももうすぐだろ?」

「気にすんな。毎日鍛えてんだから・・」

「おい!」

「ヤソ、なんで知って・・・・」

「知らん奴なんておらんよ」

「そう・・・なの?」

の頑張りを知らんのだったら、この船から追い出しとる」




その権限がアジールにあるかは謎として。

いや、彼ならありそうだ。




「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・何してんだ?」




やっとこさベックマンが声をかける。

白いワンピースを抱きかかえて、号泣している親父に。




「誰が声変わりしたって!!??」

ももうすぐだろうって話だ」

「8歳の誕生日は何が欲しい?」

「去年は肉の塊だっけか」

「一昨年はケーキじゃったな?」

「おれ、シャンクスぬきでカルヴァドスのごちそう食べたい」

「お安い御用だ」

〜〜!!俺だって祝いてえんだぞ!!」

はな水きたない

「離れとけ。折角の一張羅が台無しになる」

「うん」

「俺の肩にでも乗ってるか?」

「頭の間違いだろ」

「のる!」




ルウの頭に乗っかって、とりあえず避難。

全く。

これさえなければ。

なければ・・・・なんだ?




「どうするよ。あれ」

「どうしような。あれ」

「どうしようもないじゃろ。あれは」

「ほっとけ」




威厳をそこはかとなく落としていると思うのだが。

あの、涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔は。

まあ、見慣れてしまったと言えばそこまでなのだろうけど。




「シャンクス」

「なんだ?」

「帰ろう?」

「あ゛ぁ゛!」

「ほら、はなふいて」

「おう!」




「どっちが子供だか」

、いつもティッシュとハンカチを常備してるらしい」

「まじかよ」

「ホント、世話の焼ける船長だ」




ルウの頭の上で、

いつもは見上げる眩しい髪を見下ろした。

事件が起きる、幾週間か前のお話し。