「作ってみるか?」




そのカルヴァドスの一声がきっかけ。

カルヴァドスが小さい頃着てたのだというエプロンを貰い、

袖をまくって、材料達と対峙する。

さあ、戦闘開始だ。




「手伝うか?」

「ううん。カルヴァドスは見てて」

「だがな・・・」

「だいじょうぶ」




卵を卵白と卵黄に分けて、砂糖と混ぜる。

それからさっくり粉類と混ぜて、

型に入れれば、次はクリームを用意してフルーツを切る。




「良い匂いがすんなあ」

「これはケーキに違いねえ!」

「ルウ当たり。すごいね」

「俺の鼻の横に出る奴はいねえからな!」

「えばるとこか?」




冷蔵庫にそれらを入れて、チョコレートをテンパリング。




「何を作ってるんだ?」

「ケーキ!」

「自分のか?」

「ううん」




今日は、の8歳の誕生日だからだ。




「じゃあ・・・」

「できてからのお楽しみ」




タネをほっぺにくっつけて、

にっこりと笑うに、厨房はもんどり打つ新人達で溢れている。




「お頭、今日は静かだな」

おきてすぐにキライって言ったら死んじゃった




明るすぎる笑みに、

ひくりと大幹部達の顔が引きつる。

焼けたらしいスポンジを、危なっかしいながら取り出して、

冷ましている最中に、細工を更に仕上げていく。




「成る程な」

「おい、モップとバケツに水、用意しとけ」

「1杯で良いですか?」

「それにゼロ2つ足せよ」

「は?」

「100だ100」

「はっはあ」




クリームをたっぷり塗って、

フルーツを飾って、

チョコレートで書いた文字細工を乗せれば。




「できた!」




そのケーキを持ち上げたは、

今も甲板で屍になっているであろう船長の下へと向かう。

やっぱり、俺が今こうして、

此処に生きていると実感できるのは、

あの日、遺憾だろうが何だろうか、

俺を見付けてくれた、あんたがいたからだ。




「シャンクス」

「ぁ〜〜?」




ゾンビのようにこちらを向いたシャンクスの顔に、

一気に驚きが張り付いた。




「シャンクスとおれが出会った3しゅう年きねん」



はい。

と笑顔でケーキを差し出す。

数度瞬きしたシャンクスは、

にかっと、いつもの笑顔をくっつけて、

の頭をがしがしと撫でた。




「ありがとな」

「ありがとう。シャンクス」




感動的な場面に、

下っ端も大幹部達も、自然と笑顔になれる。

これこそ、求めていた姿なのではと、

心に思った輩は少なくないだろう。

次の台詞に、用意されていたバケツ100杯分の水が、

使用方法は変わったにしろ、

役に立ったのは間違いない。




「メイド服着てあ〜んって・・ごっっっ!!」