あれから、もう1週間になる。
ミホークが恐ろしい師匠と化してから。
「そこは違う」
「ひっ」
「筋力の質は最高なのだからな」
「そっっそうなっ・・うわぁぁぁ!!!」
とりあえず、今生きていることが信じられない。
まるで、子供が楽しい玩具を見付けたみたいに、
うきうきと、俺を鍛えることに勤しむミホークが、
それはもう、この世の何よりも恐ろしくて。
「飯にしよう」
「はっはい」
肩で荒い息をして、
ミホークの後に、なんとか置いて行かれまいと付いて行く。
服は破け、擦り傷と泥だらけの顔はまるで、
1ヶ月ほど密林で過ごしたかのようだ。
「残すなよ」
「うん」
師匠とミホークの境はどこにあるのかなんて、
もう考えなくなった。
食事の時は、まるで父のように接してくれる。
「(それにしても・・・・)」
周りに転がった骨を見て、は思う。
魚や木の実だけでは、
いつか栄養失調になってしまうのではないかと。
この状況で何をと、自分でも想うが、
成長盛りの自分の身体としては、死活問題。
「ミホーク?」
「なんだ」
「あの・・・さ・・・」
「どうした。言ってみろ」
「まちに・・・行きたいんだけど・・・・だめ・・・かな?」
「武器はまだ早い」
「じゃなくて、ごはん・・・が」
「不味いのか?」
「えいようが・・その・・・・」
シャンクスみたいに強気になれないのは、
冗談で絡んでくるのではないから。
本気で、自分を強くしたいのだと分かるから。
だからこそ、死に物狂いで着いて行った。
何になりたいのか。
それを見付けたかったのかも知れない。
「確か、彼奴のコックに色々習っていたのだったな」
「うん」
「良かろう」
ぱっと輝いたその子供の瞳に、思わず狼狽える。
弟子など取る主義は毛頭無かったが、
何故だか、此奴の身体は、
鍛えなければならないように思ってしまった。
しかも一目見ただけで。
あの変態とは断じて違う。
ひょいっと抱き上げたを、
そのまま船に乗せて、舵を取る。
赤髪の船とは違い、
間近に波を感じることのできるミホークの船。
視点を変えると言うことはこうゆう事なのだろう。
今まさに、水中で食べられていく小さな魚達。
優雅に変態行為を戒めている船の下では、
いつだって生きるか死ぬかの世界なのに。
「わかんないな・・・」
「分かる事などこの世のほんの一部だ」
「そうだね」
向こう側に見えてきた街への期待と、
頭に乗せられたミホークの掌が、
今の自分のリアルだ。