寝る子は育つ。
お昼寝の時間は差し迫りつつあって、
嗚呼、不便な身体だ・・・・。
なんて思ったのは、もう大夫昔な気がする。
「(考えて見りゃ、昼寝をしても許されるんだよな)」
なんて素晴らしい響きだ。
とか、思いつつ、眠気が襲って来る頭を振って、
扉に手を掛けようとした時だった。
ばたん。
鈍く光るサーベルと、見たことのない顔。
目を擦って、見上げて、首をかしげて。
「だ・・・れ?」
しばしの沈黙。
「おかしらあぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「んえ?」
気付いたときには、からんっと落とされたサーベルが遠のいてゆく。
脇に腕を突っ込まれ、抱き上げられた状態で、
甲板に連れ出された時かすったのは、銃弾ではなかろうか。
「見てください!この宝!!!」
「てめえ!取るなら金品取って来やがれ・・・・で、貸せ」
「やですよ。俺のもんです」
「船長命令だ」
船にあまり人が残っていないことを見ると、
敵船さんが戦場なのだろう。
「あ、ち」
「痛いか?痛いんだな?痛いの痛いの飛んでけ」
「(こいつ頭大丈夫か?)」
「よしよし。泣かないなんて偉い子過ぎるぞ。今すぐ俺の船・・ぶっっ!」
後方に飛んでいく、今し方まで自分を抱いていた男を見つつ、
は鮮やかに空を飛んでいた。
がしっと受け止められて目前に拡がったのは、
鮮やかなまでの赤色。
「に手を出したらどうなるかわかってんのか?ん?」
「(いや、もう多分聞こえてないと思うぞ)しゃんくす」
「大丈夫か!?なっっ!!!顔に傷が付いてるじゃねえか!!」
「だいじょうぶ」
「アジール!!戻ってこい!!手術だ!!」
「(意味がわからん!!!)」
目の前の敵も切り捨てないで、
土埃をあげながら、自分の前で急ブレーキを掛けた船医を見やる。
この船はもう、変人ばかりだ。
「!大丈夫か!?嫁に行けなくならんように、
わしがきっちりかっちり治療してやるからな!!」
「(・・・・・・もうダメだ。この船ダメだ)」
何故だか心配そうに見守っている幹部連中。
まだ敵の殲滅は終わってないだろう。
「てき、たおして、きて?」
首をかしげて上目使いは、凶器になることがこの頃判明した。
小さい頃はまだ、可愛げがあったらしい。
の笑顔が、変態生産機だとは、
自身も気付いてないのだろうが。
先程よりも、敵さんへの攻撃が軽やかになっているのは、
明らかに気のせいではない。
ちなみにいうなら、頬が染まっているということも。
鼻血を押さえていそうな船長は見ないふりだ。
「んっ・・・・」
「どうした?眠いのか」
「おひるね・・・とちゅうだった」
「シャンクス!!!!そいつ等八つ裂きしてやれ!!!!」
「どうしたぁあ??!!」
「の昼寝をじゃましたそうじゃ!!!」
「コロス」
「(何故・・・・)」
ばっさばっさと切られていく敵に同情を覚えながら、
は船医に抱きかかえられ、医務室へと降りていった。
どうやってこの老体が、
前線で戦っているのかは、知らない方が身の為なのだろう。
「ねむ・・・い(めんどくさい身体だ)」
「寝て良いぞ。起きたら治療は終わっとる」
「おやすみなさい」
そこからの記憶は勿論無い。
勿論無いのだが、何故か、
自分がそうなっているだろうということだけは、想像に難くないのだ。
「っ・・」
がんっっ!!!!
「静かにしろ!眠った所じゃ!!」
「だからって、洗面器なんて投げるんじゃねえよ!」
勢いよく開いた扉。
同時に宙を舞った洗面器は、弧なんて描かず、ストレート直球で、
我らがお頭のおでこに直撃した。
「2人とも五月蠅いと思うが?」
「それにしても・・・・・・・・くぁわぁいいなあぁ」
「「触るな。変態」」
「頭を敬えねえのかお前等!!」
「人としての一線を越える気か?お頭」
「心配するなベン。こんな奴のためにベットは貸さん」
「ありがてえこった」
そり忘れた髭の感触に、眉を寄せた。
それは邪な心のフィルターを通して見れば、
悶えているように見えなくも、ない、かもしれない。
可愛すぎたから、だから、そっと顔を近づけて・・・・。
丸窓から差し込んできたオレンジ色の光。
むくりと目を擦りつつ、身体を起こしたは、
隣の物体に、速攻で見ざる能力を発動した。
何が起きたかは知らない。
いや、知りたくもない。
起きたら隣でシャンクスが屍になっていたなんて。
「あじー・・」
「気にせんで良い。晩飯の時間じゃ。行こうか」
「(御免なお頭。自分の身が一番可愛い。そしてお腹空いた)」
[オリキャラ説明]
アジール:老船医。格闘家。けどひょろい。優しいお爺ちゃん。