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「これでおわり?」
「ああ」
「でも・・・」
「2ヶ月だな」
「え?」
「奴と離れて、だ」
かちんっと、小さなナイフを仕舞う音が響いた。
「そうだね」
故意ではないにしろ、長い間、
彼と離れていたのはこれで2度目。
何かを考えたのは、初めてだ。
「少し休め」
「え?うん」
彼は自分を、猫か何かと勘違いしてるのではなかろうか。
この船に乗ってから、
ひょいひょい抱き上げられることが多くなった気がする。
まあ、あの変態船長に、
後ろをとられたが最後、
命はないから仕方ないのかもしれないが。
「ねむ・・」
「眠れば良い」
「分かっ・・・た」
考えても分からないから考えない。
彼の膝の上で、撫でられている今は、
とにかく、瞼が重い・・・・。
「おや・・す・・み」
心がぐちゃぐちゃだ。
それを分かってた。
だから、ずっとずっと、稽古を付けてくれていて。
隣に置かれた小さな刀のようなモノ。
確かめないと。
自分のためにも、なんだか、ゆらゆら、
いや、ぐらぐら?
「ん・・・・」
「嗚呼、起きたか」
「・・・・・・え?・・・・ええええええ!!!」
飛び起きざるを得ないとはこの事だ。
ぐらぐらなどと可愛らしい言葉では言い表せない。
荒れ狂う嵐の中を、あの小さな小舟が進んでいる。
胡座をかいて、なんの動揺もみせないミホークを、
もう、むしろ、尊敬以上の念で見つめる。
「もうすぐ着く」
「へ・・うわっ」
「気を付けろ。振り落とされるぞ」
「どこに・・・あ・・・」
風に揺れる、ジョリーロジャー。
今にもこちらに飛んできそうな赤い髪。
それを抑える長身達。
「シャンクス」
「良く耐えたな」
「〜〜〜〜〜〜!!!!」
「ミホーク」
「行ってやれ」
「うん。ありが・・え?」
叫びと、伸ばされた手と、伸ばした手。
何を叫んでいるのか、全く聞こえなかった。
ただ分かったのは、自分の手が、彼の手に届かなかったこと。
「ん・・・・」
ぼやけた景色。
自分は海に落ちたはずでは。
見慣れた天井。
見慣れたベッド。
本棚に並んだ・・・・・医学書?
「は?」
「おや、起きたかい」
「浜辺に打ち上げられとるから死んどるかと思ったぞ」
「え・・・と?」
「兄ちゃん。とりあえずこれに着替えろや」
「兄ちゃん?俺は・・・え?」
握りしめた其れは、ぷにぷにでも何でもない。
20云年見慣れすぎた自分の手。
白いベッドに寝ころんだまま、
外の景色を眺めた。
打ち付けてくる波。
自分の世界にもあった様な気がする。
こんな風に、老夫婦がやっている病院。
「帰って、来たのか?」
揺れないベッドなんて、何年ぶりだ?
潮の香りがする。
海を感じない浜辺。
は眠気に誘われるままに、また目を閉じた。
明日は此処が何処で、今はいつなのか聞いて、
それから・・・・・。