×


「これでおわり?」

「ああ」

「でも・・・」

「2ヶ月だな」

「え?」

「奴と離れて、だ」




かちんっと、小さなナイフを仕舞う音が響いた。




「そうだね」




故意ではないにしろ、長い間、

彼と離れていたのはこれで2度目。

何かを考えたのは、初めてだ。




「少し休め」

「え?うん」




彼は自分を、猫か何かと勘違いしてるのではなかろうか。

この船に乗ってから、

ひょいひょい抱き上げられることが多くなった気がする。

まあ、あの変態船長に、

後ろをとられたが最後、

命はないから仕方ないのかもしれないが。




「ねむ・・」

「眠れば良い」

「分かっ・・・た」




考えても分からないから考えない。

彼の膝の上で、撫でられている今は、

とにかく、瞼が重い・・・・。




「おや・・す・・み」




心がぐちゃぐちゃだ。

それを分かってた。

だから、ずっとずっと、稽古を付けてくれていて。

隣に置かれた小さな刀のようなモノ。

確かめないと。

自分のためにも、なんだか、ゆらゆら、

いや、ぐらぐら?




「ん・・・・」

「嗚呼、起きたか」

「・・・・・・え?・・・・ええええええ!!!」




飛び起きざるを得ないとはこの事だ。

ぐらぐらなどと可愛らしい言葉では言い表せない。

荒れ狂う嵐の中を、あの小さな小舟が進んでいる。

胡座をかいて、なんの動揺もみせないミホークを、

もう、むしろ、尊敬以上の念で見つめる




「もうすぐ着く」

「へ・・うわっ」

「気を付けろ。振り落とされるぞ」

「どこに・・・あ・・・」




風に揺れる、ジョリーロジャー。

今にもこちらに飛んできそうな赤い髪。

それを抑える長身達。





「シャンクス」

「良く耐えたな」

〜〜〜〜〜〜!!!!」

「ミホーク」

「行ってやれ」

「うん。ありが・・え?」




叫びと、伸ばされた手と、伸ばした手。

何を叫んでいるのか、全く聞こえなかった。

ただ分かったのは、自分の手が、彼の手に届かなかったこと。





























「ん・・・・」




ぼやけた景色。

自分は海に落ちたはずでは。

見慣れた天井。

見慣れたベッド。

本棚に並んだ・・・・・医学書?




「は?」

「おや、起きたかい」

「浜辺に打ち上げられとるから死んどるかと思ったぞ」

「え・・・と?」

「兄ちゃん。とりあえずこれに着替えろや」

「兄ちゃん?俺は・・・え?」




握りしめた其れは、ぷにぷにでも何でもない。

20云年見慣れすぎた自分の手。

白いベッドに寝ころんだまま、

外の景色を眺めた。

打ち付けてくる波。

自分の世界にもあった様な気がする。

こんな風に、老夫婦がやっている病院。




「帰って、来たのか?」




揺れないベッドなんて、何年ぶりだ?

潮の香りがする。

海を感じない浜辺。




は眠気に誘われるままに、また目を閉じた。

明日は此処が何処で、今はいつなのか聞いて、

それから・・・・・。