「しゃんくす〜〜〜〜!!!」
自分とは違って元気すぎる声が、
隣の赤髪を呼んだ。
「お、またでかくなったんじゃねえか?」
「だろだろ!!こんどはいっしょにつれてってくれよ!!」
「ダメだ」
「なんでだよ〜〜〜!!」
甲板の上からのぞき込んで、
その黒髪と目が合わないように即引っ込めた。
これ以上、厄介事は御免だ。
「どうした?」
「なんでもない」
「そうか。丁度ルフィも来たとこだ。一緒に遊んで来い」
「あじーるたちとふなばんしてるよ」
「?」
は今まで、
シャンクスの変態一歩手前のスキンシップを除いて、
幹部連中に従わなかったことはない。
いくらちびといえどもここは海賊船。
上下関係に厳しいこの船で、
彼が生きていく術はそれくらいしかなかったから。
「気分でも悪いのか?」
「!何処が悪いか言ってみろ!!」
「きっきもっっきもちわ・・」
「気持ちが悪いのか!!待ってろ!今すぐ医者を・・」
ごつんっ。
「お頭、あんたの所為だ。あんたの」
素っ飛んで来るなり自分を思いっきりシェイクしやがった頭を、
少しばかり恨みを込めた瞳で睨んでしまったのは、
仕方のないことだと思うのだ。
その代わり、拳骨で頭を黙らせてくれたベックには、
しっかり御礼を言っておいた。
「しかし、お頭どうすんだ?は降りたくねえんだとよ」
「ま、とりあえずマキノさんとこ行って、事情の説明だな」
「その間は船にいても構わない・・・か」
聞こえていたけれど、
聞こえていない振りをした。
「いってらっしゃい」
「!!そんなに寂しいなら連れてってやるぞ!!!」
「はなしてしゃんくす」
「まったく!!をこんな淡泊に育てたのは何処の何奴だ!!」
「「「お頭」」」
幹部連中がそろいも揃って口にする。
「なんだと!!」
「をさっさと降ろせよ。お頭」
「帰ってくるときに、土産買って来てやるからなあ」
「ありがとう。るう」
「ほれ、行くぞ」
涙を滝のように流しながら、
ベックマンに、生ゴミ宜しく引きずられていくシャンクスを、
いつもの苦笑で見送った。
「しかし、珍しいの。が反抗とは」
「ごめん・・・・なさい」
「いやいや、これぐらいの年頃の子は、そのくらいが丁度良い」
少しの間、ぼーっとフウシャ村を見つめていれば、
丁度、識っている山賊が歩いていくところで。
やっぱり、何度見ても、彼が正しいのだと思ってしまうから、
手は出さないで良いのだろうと、思う。
思う、のに。
「!!」
後ろから呼ばれたことも気にならないくらい、
ひたすらひたすら、短すぎる脚を叱咤して、
とにかく、今、自分が出来る全速力で走った。
がしゃん。
荒すぎる息を、整えることもせず、
今し方山賊が出てきたバーの中へ飛び込んだ。
何をしているんだろうか。
厄介事は、嫌いな筈なのに・・・。
「なんでたたかわないんだよ!!!」
「酒をかけられただけの事だ。怒るほどの事じゃないだろう」
「でも・・・・つめたいよ。しゃんくす」
「・・・お前、いつから・・・・」
「さっき。ふくから、しゃがんで」
しんっと静まりかえるバーで、
精一杯に背伸びをしながら、
真っ赤な真っ赤な髪の毛を拭く。
眩しすぎるんだ。
眩しすぎて、羨ましくて、その隣に在りたいと。
「、もう良い。乾いた」
「・・・・・・・・・・・うん」
「なんて可愛いんだ!!見たか!?
俺のために必死で走って!!俺が嫁に貰ってやるからな!!」
「いたっ・・・ちょっっ・・・・たすけ・・」
さっきまでのシリアスな雰囲気は一体何処に吹っ飛んだのか。
キスでも落としてきそうな勢いのシャンクスに、
流石のも、死ぬ気で逃げようとしている。
「そこまでだお頭」
「べっく・・・・おれ、もうしゃんくすにはちかづかない」
「良い判断だな」
「おいこら!返せ!!」
ゴムゴムの実完食まで、後数秒。