どうしても、あそこで走って行かなければ良かったと、
思ってしまうのである。
「だから、それはしゃんくすにきいて」
「きいてもおしえてくんねえからにきいてんだろ!!」
「わからないし」
「ルフィ、その辺にしとけよ」
「おれはあきらめねえぞ!!」
「(頼むから、直接シャンクスと言い争ってくれ)」
「もっかいシャンクスんとこいってくる!!」
酒場から飛び出した後ろ姿を追うこともせず、
とりあえず溜息をついておいた。
「ちょっとしずかになったな」
「ん」
「そういやって何才だ?」
「(多分)5さい」
「じゃあ、ルフィよりもちっちぇのか」
「(見た目だけな)」
好意で出されたオレンジジュースも、甘ったるい物でしかなくて。
ものすごく、ものすごく、ブラック珈琲が恋しい。
だけれども、流石に、
がブラック珈琲なんぞ美味しそうに飲んでいたら、
アジールに変な薬を飲まされかねない。
シャンクスに何を食わされたんじゃとか言って。
結局の所、問題の原因はシャンクスになるのだけれど。
「おいおい、子供が真っ昼間から籠もってんじゃねえよ。
子供は外で、元気に走り回るもんだぞ!」
出た。トラブルメーカー。
「べっく、しごとはおわったの?」
「一通りな。は良い子にしてたか?」
「うん。(少なくとも歩くトラブルメーカーよりは)」
「〜〜!!俺も頑張ったから癒してくれ!!」
「いやだ。こないで」
だばーーーーっと、目から溢れる水。
あれは幻覚だ。
そう言い聞かせたは、
ここにいればいずれ、
シャンクスを探しに行ったルフィと鉢合わせして、
また何時間と問いつめられるのが目に見えたため、
近くにいたエースの手を取った。
「あそびにいこう?」
「おう!」
「なんだってそんな餓鬼んちょの方が良いんだ!!」
「さっき、子供は外で遊ぶもんだとか言ってなかったか?お頭」
「それとこれとは話が別だ!!
そんな餓鬼が恋人なんて認めねえぞ俺は!!」
「しゃんくす」
「どうした?やっぱり大人の魅力ってやつに気付いたか!!」
「なにひろいぐいしたの?」
かちんっと固まったお頭を通り過ぎ、
副船長の爆笑と、船長の怒鳴り声をいってらっしゃいに、
2人は手を繋いだまま外へと飛び出した。
「それにしても、赤がみのおっさん、ホント変だな!!」
「うん。すごく。すごくね(流石、常識人)」
手を繋いで、波打ち際を歩く。
時折打ち付ける強い海水が、
カーゴパンツの裾を濡らして、また引いていった。
後ろから付いてくる、
ストーカーも吃驚な赤髪は、
勿論、全力の見ざる能力で、自分の脳味噌から追い出して、だ。
「ここさ、」
「うん」
「いちばん夕日がきれいなばしょなんだ」
「へえ」
今は夕日のゆの字も見えないくらい真っ昼間だけれども。
「あ、は貝がら好きか?」
「まあ」
じゃあ、と言って、その辺りの貝殻を拾い集める彼を、
純粋に可愛いと思ってしまう自分は、
決してロリコン且つホモ趣味ではない。
「にやる!」
一体何処から、錐と麻紐なんか取り出したんだお前。
差し出されたのは、
ただ紐に貝殻を3つ通しただけの、シンプルなネックレス。
けれども、自分のためだけに作られたそれに、
悪い気なんて全くしない。
「ありがとう」
首からかけられた首飾りが、
この先、決して失くせない宝物になるなんて、
思いもしなかったけれど。
(!おまえうまそうなもんかけてんな!!)
(ルフィ、これはくえないから)
(そんな玩具捨てちまえ!!)
(お頭、餓鬼に嫉妬してどうする・・・・)