「〜〜あそびに行こうぜ!」
「まって」
「おせえぞ!」
「るふぃは、いつもいつもねぼうするくせに」
「そうか?」
「(そうだよ。叩き起こしても起きやしねえ)」
「よっしゃ!探けん開始!」
日々、塗り替えられていく、海の、記憶。
それは、嬉しくもあり、悲しくもあった。
「うっまそ〜〜!!」
「いや、それはくえないとおもう」
「ほっとけ。死にゃしねえよ」
「えーすは、しんぱいじゃないの?」
「オレは、の方が心配」
ピンクや紫やブルーなんかの、
明らかに毒々しいキノコを、
美味そうと表現するルフィのおかしい眼は放っておいて、
繋がれた手は、暖かいから。
決して邪な心ではなく。
「なんで?」
「すぐころぶだろ?」
「それは・・・」
木漏れ日がさす。
短くなった手と足では、やっぱり思い通りには行かないことが多い。
その所為で、傷を作ることなど多々あった。
「この前見つけたトコで昼飯食おうぜ!」
「まきのさんがもたせてくれたやつ?」
「そ、なんてったっけ?」
「べーぐるさんど」
「ぎゃははははははははは!!!」
「「・・・・・・・・」」
いきなり笑い出したルフィは、
まあ、予想なんてしなくても、
あのキノコを食したんだろうということは明白で。
「ルフィ・・・はけ」
「ぎゃはははっふひひほほほほほ」
「(完璧に壊れた。ちょっとまずい気がするんだが・・・)」
「はあ」
「ひひひあひしゅふっほほほほはははっっっ!!」
「(まあ、なんとかなるか)」
どうにも、ルフィと行動を共にしていると、
自分が寛大になったような気がする。
それを寛大と称して良いのか、
危険察知能力が落ちたと言った方が良いのか、
それはまあ、定かではないが。
未だ笑い続けているルフィの首根っこを掴み、
ずるずると、木の根に引っかかることなど総無視で、
引き摺っていくエースを見ていると、
少しばかり、赤髪と副船長を連想させた。
エースが苦労死しませんようにと、本気で願ったのは内緒。
「えーす?」
「なんだ?」
「るふぃ、あがってこないけど?」
「へいきへいき」
ぽいっと湖に放り込んでから、
既に数分は経過していると思うのだが・・・・。
何事もなかったかのようにお弁当を拡げる彼もまた、
危険察知能力が、かなり低化しているのだろう。
「、ハムのやつ好きだよな?」
「うん・・・すき・・・・・・だけど・・・」
本当にやばい気がするのだ。
ルフィが湖に放り込まれてから、既に10分ほど経過している。
人が息を止められる限界など、当に超えている筈だ。
「?」
「ちょっとみてくる」
「あ、おい!!」
エースの手を振り切って、どぼんっと服のまま飛び込めば、
案の定、死にかけのルフィが漂っていて。
かなり重いけれど、
引き上げなければ、自分達が殺人者だ。
「っはっ!」
「!!!」
「けほっ」
エースの手にルフィを委ねて、自分も陸へと上がる。
勿論、手足の短さからもたもたするのは当たり前。
「ほら」
「へ?」
脇に手を突っ込んで持ち上げなくても良いと思うのだが・・・。
そもそもこれは子供の力ではない。
末恐ろしい子供だ。
引き上げられて、
濡れた服のまま芝生に寝転がる。
木々の間から漏れる光に手のばして、
笑いあった。
海の匂いすらしない日常。