「ーーーでな!ーーーーだからな!」
「うん」
「ーーーーでさあ!!」
「そっか」
「君、ジュースのお代わりは?」
「ください」
「聞いてんのか!?!!」
「きいてるよ」
流してるけどというのは、言わないでおく。
言おうものなら、
至極めんどくさいことになるからだ。
エースは珍しく何処かへ行ってしまったようで、
朝からずっと、ルフィのおもりが続いている。
「うみ行こうぜうみ!」
「るふぃ、およげないでしょ」
「砂はまならだいじょうぶだ!行くぞ!!」
「え、ちょっ」
こうなることは、もちろん、分かっていた。
欲望に忠実なる、未来の海賊王。
途中、何度も転けそうになりながら、
見える背中はやはり、大きいなと思ってしまう。
流石、シャンクスに見初められるだけのことはあるな。
「ついたあ!!!!!」
「うるさい」
「およぐぞぉぉぉぉ!!」
「およげないって」
なんだか此処で生活するようになってから、
突っ込みに磨きが掛かった気がするである。
それは思い過ごしでも何でもない。
「おれ、ぜったい、かいぞくになるんだ!」
「うん」
「かいぞくになって、なかまあつめて」
「うん」
「なんで、シャンクスはつれてってくれないんだろうな・・・・」
「(ルフィが上に立つ人材だと思ってるからだろ)」
波打ち際ぎりぎりに座り込んで、
船先が見えるのを待つのは、
決して、ルフィだけじゃないことを、当の昔に気付いている。
「がんばれ」
「おれがかいぞくになったら、もなかまに入れてやる!」
「いいよ」
「なんでだよ!うみはろまんなんだぞ!!」
「そう・・・・だね」
自分にとっての浪漫は、
彼方に置いてきてしまったか、
いや、昔から浪漫なんて代物、持っていなかったのではないだろうか。
今は、至極、あの赤く眩しい髪が懐かしい。
「るふぃ、はいるなっていったのに」
「すこひなら・・・・ひけるほおもっはんはよ!!」
波に触れて、死体のように倒れているルフィを隣に座らせ、
もう一度、水平線を見やる。
「だいじょうぶ?」
「へいきだ!」
「よかった」
「」
「ん?」
「こんどは、いっしょにあそぼうな!」
にかっと光った笑顔に、
目を丸く見開くしかなかった。
何かを直向きに追いかけたいと、
願っているのは自分だった筈なのに。
眩しいと、ただ、思って、
何故、そんな風にと、疑問ばかりが膨らんで。
折角、子供という無邪気な身体を手に入れても、
入ろうとしなかったのは自分。
忘れるのではなくて、
大人だからと、変なところで頑なになって、
いつもいつも、上から目線で一緒にいた。
「(気付いて・・・・たのか)」
「ーーーーと、ーーーーがさ、おすすめで・・」
「(ありがとう。ルフィ)」
「?」
「なんでもない」
自ら握ったゴムゴムの手は、
少しだけ、湿っていた。