「(嗚呼!くそっ!!)」
風を、裂いて、走れたらいいのに。
言うことを聞かない小さな身体を、
一生懸命に動かす。
ルフィやエースが好きだと言っていた湖に、
1人で出掛けて、
薬草を摘んで戻ってみれば、
転がったコップと、倒れた椅子と。
今日が其れだと、分かっていなかった自分。
知っていたのに。
識っていたのに。
「るふぃ!!」
「っ!くんな!かえれ!!!」
「いやだ」
「なんだ?また可愛らしいのが出てきたな」
「るふぃを・・・はなして」
切れる息を、整えながら、
精一杯、舌足らずな口で、そう、伝えた。
うっと山賊が詰まったのは、見ない振りをしておく。
「それじゃあ、お前が代わりになるか?」
「ダメだ!!」
なんだっけ?
自分を心配してくれる人がいるのに、
それを気にも掛けないで、
自分を貶めるような行為は、
彼等に失礼だと・・・。
何の本で、読んだんだっけ?
「にげろ!!!」
「いやだ」
「お前くらい可愛気がありゃ、そっち方面に買い取って貰えるだろうよ」
「るふぃをはなして」
「お前が代わりになるならな」
「はなすのがさき」
「一丁前に山賊と取引しようってか!!」
「はなして」
「可愛い顔して、やることは狡か・」
どがっしゃぁぁぁぁ!!!!!
「オレの嫁に何し腐っとるかお前等ぁぁぁぁ!!!!」
「(聞こえなかった聞こえなかった聞こえなかった)」
見るも無惨に顔が変形した、
自分に触れようとしゃがんでいた筈の山賊に、手を合わせておいた。
「!!嗚呼、相変わらず可愛いなあ」
「いや」
隅っこでのの字を書き出したシャンクスに、
溜息しか出ない。
山賊達も、可哀相なモノを見るような目で、
こちらを見てくれやがっている。
「お頭!!凹んでる場合じゃねえって!!」
「しゃんくす、るふぃを、たすけて」
「任せろ!!」
こいつには、効果抜群の上目遣い。
自分は、こいつを追いかけて、
嫌な性格にならないだろうかと、
少しばかり心配になったであった。
識っているとおりに事が運ぶ。
銃声の、音が、響く。
人が、倒れる。
20云年生きてきて、
初めて間近で見た、人の、死。
いつもいつも、遠ざけてくれていたのに。
「!」
「だいじょ・・・・ぶ」
「こっち来てろ。今はまだ見なくて良い」
頑丈な腕に抱かれて、
目を背けた。
受け入れるから。
必ず、いつか。
近いうちに?
もう、受け入れないと。
肩に埋めた顔。
聞こえる叫び声。
ルフィが、連れて行かれてしまったのだろう。
何処かでそれを望んでいた自分は、
本当に狡猾で、人の風上にも置けない。
まして、彼の隣にいたいなんて・・・・。
「追いかけるぞ。、お前は此処にいろ」
「いやだ」
「。良い子だろ?」
「いいこじゃない」
「どうしちまったんだ?」
「どうもしてない」
「残れ」
「かってについていく」
「聞き分けろ」
「いやだ!!」
識っていたはずなのに、
涙が流れる。
人の死。
命の終わり。
そして、自分の、貪欲さと、
汚いまでの、執着心。
だったら、とことん我が儘になってやる。
「あ〜あ。お頭泣かした」
「おっおれかぁ!?」
「お頭以外の誰がいるよ」
「はベンに執心じゃしな」
「嫌われてんのはお頭ぐらいだ」
「のぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「(壊れた・・・・・・元からか)」
とりあえず、早く追いかけた方が良いと、
涙を流しながら、は思った。