Dandelion:思わせぶり


子供の笑い声が一瞬聞こえなくなって、

爆発的に大きくなったら、

それは、

また彼が来た証。




「怪我したから、治療するよね?」

「此処は小児科だと、何回言ったら分かるのかしら?」

「今日は結構派手にやったから」




きゃっきゃと黄色い鳥を追いかける患者達を見やり、

溜息をついて治療を始めるのだ。

明るい雰囲気に不釣り合いな、

真っ黒な服、真っ黒な髪。




「全く、何処でこんな派手に転んでくるの?」

「家だよ」

「その家の構造が気になって仕方ないわ」




怪我をすることでしか、

治療することでしか、

君に、

貴方に、

触れることすら叶わない。




「はい終わり」

「つけといて。後で払わせるから」

「いつも通りね。いくらおつりが溜まってるか分かってるの?」

「計算も出来ない草食動物か・・・咬み殺さないと」




詮索はしない。

お互いに共通して知っているのは、

名前、くらいだ。




「雲雀さん、ちゃんと外科医に診て貰った方が良いわよ?」

「外科医の免許も持ってるんだったら、問題ないよね?」

「誰に聞いたの?」

「其処の小さいのに」

せんせえ〜〜!」

「もうちょっと向こうで遊んでようか」

「はあい」

「ひばり〜ひばり〜」

「咬み殺して良い?」

「良いわけ無いでしょう」




時たま見せる、

子供っぽい笑みが、

母のような笑みが、

貴方が、

君が、

何なのか、忘れさせてくれたから。




「草壁」

「はい」

「綱吉にコレ、届けといて」

「怒られますよ」

「関係ないよ。頼んだからね?」

「分かりました」




当たり障りのない会話をしているつもりで、

何処か、気付いて欲しい自分がいる。

そして、こちらに来てくれれば良いのに。




「貴方専用の救急箱が出来そうだわ」




つくって、くれたら良い。

僕の特別。

それは決して、有り得ることではないのだけれど。




「今度、余ったおつりでお茶でも驕ってよ」

「女に驕らせる気?」

は余るほど持ってるでしょ?」




私、だけだと良い。

貴方の特別。

きっと色んな女性に、そうやって声をかけるのだろうけれど。




腰を上げる。

見送りの合図。

今日の、さよならを。




「それじゃあね」

「またが無いように祈るわ」




塗り固めた嘘を、知らない振り。

お互いの気持ちも、分かっていない振り。

明日も、さよならを。




「お大事に」




どうか、怪我が治りませんようにと願いを込めて、

今日もまた、嘘を吐く。




Thanks 10,000hit. To なみ様.