Kudzu:治癒
己の背を預けて、戦うことなどいつも。
2人にとってそれは、当たり前の日常。
ルフィの腕が伸びる。
死角を狙ってくる敵を殴り飛ばすのは。
お互いがお互いを支えあう。
だからこそ生まれる高揚感は止められない。
「なあ、ルフィ?」
「なんだ?」
「いや、なんだ?じゃなくて、サンジが飯だって呼んでるぞ?」
「・・・・・・・もうちょっと」
こちらに身体を預けてくるルフィの頭をなでながら、
影から様子をうかがっていたコックに、
視線で謝罪を送った。
いつものように、ほどほどにな。と帰ってくる。
懸賞金が上がれば上がるほど、襲ってくる船はもちろん増えるわけで。
弱いクルーではないにしろ、人間でないわけじゃない。
怪我だってする。
「ルフィの所為じゃない」
「俺の所為だ」
この押収の繰り返し。
自分がもっと強ければ。
船長として、みんなを、守って、あげられるくらい。
「お前が見染めたクルーは、そんなやわい奴らじゃないだろ?」
抱きしめる腕を、いっそう強めれば、
自分の腰に巻きついている腕がこたえてくれる。
「だよ・・・な」
「飯が待ってるぞ」
「おう!!・・・・っ!!!」
「なんだ?まだ甘え足りな・・」
「怪我!!」
一応、隠してはいたのだけれど。
その位置からだと、見えるのか。
ぱっくりとひらいた切り傷。
腹にあるそれが、シャツのなびきと、下から視線のルフィには、丸見えなんだろう。
「大した傷じゃないし、チョッパーに化膿止めぬってもらったから」
「嫌だ」
どうして今日はこう、聞き分けが悪いのか。
「わかった。わかったからシャツを引っ張るな。伸びる」
「座れ」
言われるがままにもう一度胡坐をかくと、
いきなりまくられたシャツ。
そっとルフィの顔が近付いて、つけられた傷に、舌を這わしているのがわかる。
「おいこらっ!」
「消毒だ」
「化膿止め飲み込むだろっ!!」
無理矢理ひっぺがして、自分の膝の上に座らせた。
何が悪いのかわからないといった表情の子供が、
こちらを見つめてくれている。
餓鬼で餓鬼で、どうしようもないくせに、
時々見せる大人びた表情が、
自分を抑えられなくしていることを、こいつは知らないんだろう。
「ありがとう」
もう、怪我するな。
小さな小さな呟きに、もう一度ありがとうをのせて、
今日の晩御飯は、2人で遅くに取ろうと決めた。
Thanks 10,000hit. To 壱伽様