Ume:忍耐
俺は夢でも見ているんだろうか。
目の前に靡く赤い髪。
面影の欠片もなくて、
自分がだって分からないんじゃないかなんて考え、
既に頭から吹っ飛んでいた。
「シャンクス!!」
気付いたときにはもう、
彼との距離は、ゼロ。
「お前・・・・・・・か?」
「捜したんだぞ・・・って、それはシャンクスの台詞だな」
記憶よりも、
そして、過ぎた年月よりも大きくなった彼が、
自分の腕の中にいる。
しかも、満面の笑みなんて素晴らしいオプション付きで、だ。
「事情は後で説明する・・・ってのは、ダメか?」
此奴、見たとこ20代後半だろ?
なのにこの可愛さは何だ。
フィルターなんてかけてねえぞ俺は。
自分より少し高い身長。
それなのに首をかしげた犯罪的な可愛らしさは、
あの時と変わらない。気がする。
「でかく・・・なったな」
「やっぱベックの身長は抜けなかったよ」
「抜かれていたら一大事だ」
「へへ」
「、シャワーでも浴びてきたらどうじゃ?」
「そうする。あ、でも着替え」
「俺のを貸してやろう」
「さんきゅ」
離れて行ったことに、ほっと溜息をついた。
ただただ可愛くての子莫迦愛とは違う。
そんなこと、この10数年、
彼を捜し続けて気付かない方がどうかしているのだから。
「お頭」
「なんだ」
「頑張れよ!」
「気合い入れてな!」
「ベッドは貸さんぞ」
「夕飯までには処理してくれ」
「換えの服だ」
此奴等・・・・。
自分達は子莫迦愛だからって糞っ!
してやったりの笑みを隠そうともしないベックマンの手から、
服をふんだくって、
物凄い足音をわざと立てながら、
シャンクスは階下へと降りて行った。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
いや、まあ、しょうがない。
はシャンクスの部屋でいつも風呂に入っていたし、
むしろそれ以外で入らせたことなんて無かったから、
自分の部屋のシャワーを使うことは、
予想できたことなのに。
「、着替え持って来てやったぞ」
「悪い!今出るから」
「ちょっ・・」
待て。
なんて言葉、吐かせて貰える筈なんてなく、
素敵に身体をさらしたが、
風呂場の戸を開けて、当たり前のように出てきた。
というか普通だ。
男同士なのだから。
「ズボンは流石に合わないか。
洗っちゃったから、乾くまで此処にいさせてくれな」
ほそっこい腰。
日に焼けた身体には、適度に筋肉が着いて。
耳元と鎖骨辺りで揺れるアクセサリーが、
濡れたままの髪が、
下半身を刺激するのが分かる。
着ていた下着を身につけて、
俺が持って来たシャツだけ羽織ったは、
そのままベッドに腰掛けやがった。
形の良い生脚が、
これまた惜し気もなく、目の前に晒されている。
誘ってるだろお前・・・・。
「」
「うん?」
「いや・・・」
「シャンクス、どうした?ふけて変人に磨きが掛かったのか?」
変わらない笑顔。
はいそうです。
なんて、言えるわけがない。
「冗談は置いといて。
俺、また赤髪海賊団に戻りたい。
今度はれっきとした海賊団の一員として。
身体も大きくなったし、前より出来ることは沢山・・」
途中から話なんて右から左。
頬杖も、憂いな表情も、悲しげな瞳も、
意図してやってるとしか思えねえ。
「やっぱし、ダメか・・・な?」
トドメだ。
此奴お得意の、上目遣いに首をかしげて、
苦笑と来た。
「とりあえず黙れ」
自分の上にさした影に、
唇に感じた感触に、
何が起きたか分かったのは、
大夫と後だったような気がする・・・・。
Thanks 10,000hit. To てん様.