Wisteria:歓迎



駆け引きは苦手だったはず。

あっちにいた頃から、人を虜にする術とは、

まったく縁なんてなかったのだから。




が麦藁海賊団と共に出航してから幾日かが過ぎた。

幾日か分からないのは、

あれからずっと海を眺めてばかりいるから。




・・・・」

「何やってんだルッチ?折角遊びに来てやったのに」

っ!!」




聞こえた声に後ろを振り向けど、

彼が居るはずもなく。

力なく、また、椅子を座り直す。




「幻聴まで聞こえるようになったとはな・・・・」




彼は赤髪を求めた。

そして自分で彼を捜すことを決めたのだ。

だったら、俺がを求めて何が悪い。

此処で引き下がってやる必要性など、まったくないものを。




「カリファ、彼奴等が出てから何日経った」

「まだ2日よ」

「そうか」




昔は必要でないと言い聞かせた。

今は必要だと、はっきり分かる。

ルッチは窓から飛び出して、そのまま全速力で駆けて行った。










〜〜〜おやつくれ〜〜〜」

「はいはい。何が食べたいんだ?」

「何でも良い」

「それが一番困るって言ってんだろ?」

が困るのはダメだ!!」

「あのなあ。ナミ〜何食べたい?」

「そうね・・・ジェラート」

「了解」




朝飯の前に掃除をして、

朝飯が終われば洗濯。

昼ご飯の後はチョッパーの手伝いをして、

全員分のデザートを作る。

夕飯まではゾロと鍛錬。

これがまた捗る。

こんな風に、前と同じポジションを許されているのは、

至極光栄なことなのだと俺は知っている。




「なあナミ、蜜柑使っても・・」

「どうした?」

「サンジ、俺、目おかしくなったかな?」

「なんだそりゃ」

「ルッチが飛んでくるのが見える」

「はあ?」




その声にぐりんっと、全員が後方へ視線をやれば、

確かに黒っぽいものが飛んできていて。

それが豹型だと気付くのに、

そう時間は掛からなかった。

まさか、本当に・・・・。




「てめえ!何しに来やがっ・・」

「ルフィストップ!ルッチお前!なんて顔色してんだ!!
チョッパー、医務室借りるぞ!!」




当たり前のように、ふらついたルッチを抱きとめて、

医務室へと駆け込んだを、

麦藁海賊団の面々はただ、見ていることしかできなかった。






「お前莫迦だろ。最強の莫迦だろ。
シャンクスより莫迦って称号つけてやる。この莫迦」



「何で此処にいるのかは起きてから聞く」

「俺にはお前が必要だ」




鎮静剤を売っても眠らなかったルッチが発した、

欲しかった言葉。

駆け引きは俺の勝ちで良いんだよな?

直ぐに聞こえてきた寝息に、

紅くなった頬を見られずにすんだと、

はひとつ、溜息を零す。




「ホントはさ、前も追いかけてきて欲しかったんだ」




あたたかかったから。

そんなか細い声が、麦藁海賊団の医務室に消えていった。




Thanks 10,000hit. To 紅葉様.