Zinnia:絆
「お頭、出航準備できたぞ」
「嗚呼」
「また、やってたのか」
「諦めが悪いと思うか?」
「・・・・・・・・」
「もう10年だもんな。俺もおかしいと思ってんだけどよ」
止めらんねえんだこれが。
そう言って笑う船長に、
自分がかけられる言葉と言えば、
一つだけだ。
「それ以上の写真を引き伸ばすのは止めておけよ」
「どぅあってこんなに可愛いんだぞ!!」
「今はもう18だろう」
「だよな」
想像して、こんな顔だという似顔絵を、
いくら腕の良い絵師に書いてもらったって、
違うと確信して捨ててしまう。
結局の所、10年前に撮った写真しか手元にないわけだ。
それを、後生大事に、
いつだって肌身離さない自分。
「ちょっと出航待っててくれ」
「分かった」
脚が、勝手に見付けた場所へと向かう。
一本の、これは何の木だろうな。
はきっと知っていたんだろう。
海の見える小高い丘は、の好きだった場所だ。
シャンクスが格好良く見える場所だよね。
そう言っていたのを知っているのは、
ベックマンだけなのだけれど。
「・・・・」
毎年毎年、彼を見付けたこの日に、
一つずつ、彼への贈り物を瓶で流した。
女々しいか。
分かっている。
生きているかどうかも分からない彼にあてたプレゼントなんて。
「!出航するわよ!!」
「悪い!ちょっと待っててくれないか?」
「忘れ物か?」
「やりたい事があってさ。直ぐ戻るから」
何事もないように振る舞えただろうか。
見付けた小高い丘へと脚を向ける。
「この日に見付けられれば最高だよな」
ただ、君と繋がれる日が、
この日しか、思いつかなかっただけだ。
絶壁に座り込んで、海へと手を伸ばす。
どうか、どうか、彼へと届きますように。
この花片が、どうか彼へと届きますようにと。
「シャンクス・・・・」
ひとしきり海に手を伸ばして、
苦笑を漏らしたは、
待たせてしまっているのであろうルフィ達の下へと引き返した。
まさか、ケーキに添えた花だなんて、
自分でも何をやって居るんだか・・・・。
「ん?」
海岸沿いに歩いていたの目に飛び込んできた透明な瓶。
覗く赤い色に惹かれて、
近くまで寄ってみて、
見なかったことにしようかと、
数分悩んだように思う。
「お頭、そろそろ・・・」
「嗚呼・・・ん?」
海に浮かんだ、見覚えのある花片に、
今までで一番早く地面を蹴っただろう。
その証拠は、未だに靡いてるベックマンの髪の毛。
「懐かしいな」
「・・・・・・・・」
「お頭、出航を・・」
「ベン見ろ!!!が俺にくれたんだ!!」
「・・・・・・・・」
「。必ず見付けてやるからな」
波が運んでくれた、ささやかな軌跡。
ゴールがあるか分からない旅路には離れている。
けれどもう一度、
この腕に君を抱くと決めたその日から・・・・。
「あら、もう良いの?」
「嗚呼」
「どうしたんだ?嬉しそうだな」
「ちょっとな」
赤い髪そっくりで、継ぎ接ぎだらけの小さな小さなマスコットを、
もう一度ポケットに押し込んだ。
Thanks 10,000hit. To 飛鳥様.