降りていけば、無言で見つめられる事数秒。




「どうかした?」

「お前の変わり様に驚いてるだけよ」

「そんなに?」

「・・・・・・嗚呼」

「どう・・・・かな?」

「ぼくは好きだよ?」

「ありがとうコルトピ」




満面の笑みに赤面。

戻ってきていたクロロも唖然としたままだ。




「化けたわね」

「そう?」

「似合ってるよ」

「それは?」

「あたしが具現化した。コルトピがいっぱい教えてくれたから」




スムーズに出来たんだよね?

と、2人しか分からないアイコンタクト。

後は特質系の修行を残すのみ。

まさか半月でやってしまうとは思いもしなかった。

半月、もしくは1ヶ月、彼女を独占できるのかと思うと、

少し、いらいらが収まったように感じる。




「ところで団長、何か俺達に言いたかったんじゃないんですか?」

「嗚呼。忘れていた。盗むぞ」

「全員?」

「とりあえずココにいるな」

「そんな大掛かりな仕事なのか?」




皆が仕事の話をしだすと、

決まっては輪の中からはずれ、少し遠くへ座り込む。

自分には関係のない話だからだ。

念を覚えたのも、彼らが言ってくれたからで。

だから、だから・・・・。




自分で何一つ決めない。




多分今日も、留守番を頼まれるだろうから、

其れを遂行するに過ぎない。

自分はまだ変わっていないのだ。




、悪いな。警護頼むぞ」

こくり。

「念の修行は帰ってきてからだ」

こくり。

1人残すのは危なくないか?」

「念を覚えたんだろう?」

「まあ・・・・」

「なら問題はない筈だ」

「けど、あいつ実践してないぜ?」

「大丈夫だよ」

「さっさと行くぞ」




でかい山なんだと話しながら去ってゆく。

直ぐに帰ってくるからねとコルトピ。

心配するなとボノレノフ。

ただ笑う。意味も無く笑う。



どんな話をしていたの?

何を盗りにいくの?

いつ帰ってくるの?

絶対に問わない。

そう決めた。

がらんとしたアジトで、具現化した人形を弄ぶ。



もう、感じられないところまで、オーラが離れていってしまったのがわかった。

久しぶりに独り。

独り。

ヒトリ。




「っ!!」




耳鳴りだ。

独りになると訪れる静寂。

けれど長続きはしない其れ。

人形を抱いて蹲り、耳を塞ぐ。

それは止まる事なんか知らないんだけれど。




「ダイジョウブダイジョウブダイジョウブダイジョウブ」




言い聞かせる。

自分に暗示をかける。

其れを見ている人形の瞳は、無機質なボタン。










それから幾日が過ぎただろうか。

いや、数時間かもしれない。

もしかしたら数分かも・・・・。

ずっと自分がダイジョウブと言い聞かせていたのだろう。

声が掠れて上手く発声できなくなってる事に気づいたのは、

出て行った皆のオーラを感じ取ったから。



がばっと顔を上げて、

扉へ駆け寄って、きいっと向こうが開く前にこちらから開けて、

それから、それから・・・・・。




「・・・・・・・・え?」

「その服、えらく気に入ってんなあ」

「貴方、1週間ずっと其れ着てるの?」

「ただいま




どうして皆ぼろぼろなの?




「っか〜!面白かったぜ!!!」

「ウボォーはただ暴れてただけだろ?」

「てだれ集まてるなら、先に言て欲しかたね」

「言ったところでなんら変わらん」

「まあ・・・・」

?どうし・・」




叫び声が耳を劈く。

そりゃあ、いつもよりは怪我をした。

ゾルディック並の実力者が揃っていたんだ。

致し方ない。

けれどそれは、かすり傷や打撲、行っても軽い骨折程度。



ただ、目前で叫ぶ少女が、

涙を流していたから、

それ以上、言葉を発する事は叶わなかったのだけれど。




「どうし・・・どうして怪我!!」

「言っただろう?実力がまあまあだった。だから一応全員と言ったんだ」

「でも!!っでもっ!!」

「何をそんなに脅えている?」




血が出てる。

自分でない人から血が出ている。

自分に居場所を与えてくれるヒトから血が出ている。

血。痛み。死。




「いや!!いや!!」

?」

「様子が変よ。とりあえず中に・・」

「死なないで!皆死んじゃダメ!!」

「おいおい、俺らはこの程度じゃ死なねえって・・」

「独りにしないで!!!!!」




そう叫んで見上げた彼女の瞳には、

確かに自分達が、




映って




いたのだ。