朝っぱらから呼び出されて何事かと思った。
すぐに来いだなんて、今までなかったことだから。
「ねえ、なんで急に呼び出されたの?」
「さあね。団長の気まぐれじゃない?」
「シャル、フェイタン、お前等、なんか知ってんじゃねえのか」
唯一、自分たちが来る前にこの場に居た2人。
団員達の目が、2人に集中する。
呼び出したヒソカには見向きもしない。
何故なら命令を遂行したに過ぎないと思われているからだ。
「ワタシ知らないね」
「使えねえな」
「死ぬか?」
「ちょっと」
「シャルは?」
「・・・・・・・・のことだと思うよ」
「?」
「なんで其処にの名前が出てくるの?」
「見れば判る」
嫌な予感が、せなを撫で回す。
「皆さん勢ぞろいしてどうしたんですか?」
朝ごはんを食べようと誘われて、降りて来た階段。
好きなところに座ったり立ったりしながら、
それでも其処に集まっている団員達。
見開いた眼が自分を見つめているなんて、
そんな自意識過剰は直ぐに捨て去った。
「?」
「ボノレノフさん、お帰りなさい」
「どうゆう事?」
「何がですか?」
「それについてはオレが説明する。パク、とキッチンへ行け」
「判りました・・・・。行きましょうか」
「はい」
さらさらと崩れていく過去。
過去と言っても、壮大なわけでもない。
彼女と過ごした、自分たちの人生のほんの少し。
けれど、崩れてはいけない海の近くの大切なお城。
「どうゆう事だよ」
「俺たちのところに来たときは普通だったぞ」
「帰りの飛行船で何かあったらしいんだ★」
「あんたが着いていながら?」
「ボクの所為かい?」
「違うな。何が引き金になったかは知らないが」
「でも団長!!」
あんな、変わり方は。
皆がそう思ったけれど、ヒソカに当たるのはお門違いと思ったのも事実。
アジトに虚しく響いたマチの声は、
団員全員の思いを凝縮していたように思う。
「どうするんだよ」
「どうしたい」
「?」
「この際、蜘蛛から抜けさせるか?」
「本気?」
「いたってな。今のあいつは使えない。ただの壊れた機械だ。
そんなやからを蜘蛛においておくほど、俺たちは暇じゃないからな」
殺気が飛んだのは言うまでもないだろう。
「団長、それ、本当に本気で言ってるなら、ボクはココを抜ける」
「勝手にしろ」
「団員のマジ切れはご法度でしょ」
「団長もなに言ってんだよ!」
「フィンクスは黙ってよ。どうなの?団長も気付いてる筈だ。
が認めてくれって泣いたあの日から、中心にまとまっていた蜘蛛の存在」
「だからなんだ?元の体系に戻せば良い話だろ」
自分でもなんて馬鹿なことを言っているんだろうと判っている。
けれどそれ以外どうしろというのだ。
何処にいても変わらないなら、命の危機に晒されない方がましなのでは・・・。
大事な大事な玩具を仕舞いこんでしまうように。
「もうちょっと考えた方がいいと思います」
「オレもその意見に賛成かな」
「また壊れたときの責任は取れん」
「団長・・・・」
悲痛な叫びのように聞こえた。
もう、あんな瞳を見るのはゴメンだ。
「一時的に別のところに預けた方がいいのかもしれないね」
「もしくは、誰かの仮住まいとか」
「どっちにしても、ココに置かないほうがいいとオレは思・・」
「!!!」
かんかんっと階段を駆け上る音が響く。
一瞬呆けてしまった団員達も、直ぐにその後を追った。
どうして、どうしてこんなに悲しいの。
役立たずなんかじゃないのに。
ワタシはイイコにしてきたのに。
どうして必要としてくれないの。
思いっきり開いた屋上の扉。
其処から見える下界の景色に、は眩暈を覚えた。
なんて、なんて綺麗なのだろう。
嗚呼。跳びたい。
上下に揺らした肩をそのままに、すっと、端まで移動した。
また、くらり。
後ろで雑音が鳴っている。
振り返って、ぽんっと蹴飛ばした硬いアスファルト。
手を伸ばしている人・・・・違う。
胸をなでおろしてる。
安心してる。
ほっとしてる。
其の人影に向かって、手を、振ったのは、ワタシ。