ふらふらとそのパズルの箱を抱えて、
今までいた場所へ戻っていく。
「やけに懐いてんな」
「フィンクスには無理だよ」
「なんだと!」
「ほら、怖がってる」
「嫌がってるの間違いじゃないのか」
すいっとあまりにも自然に遠ざかるから。
どうでもいい存在だった。
こちらにも興味を示さず。
さしていえば、殺気に動じなかった事くらい。
けれど、懐いたものにしか見せないその表情に、
誰もが関心を示しているのがクロロにはわかった。
ぱかりと開かれた箱。
うげえっという表情を出すフィンクス。
興味本位で近づいていたウボォーギンも然り。
「取られちゃいましたね」
「なんだ」
「団長が彼女を置こうとした理由、今ならわかる気がしますよ」
「・・・・・・・・」
「俺も興味出てきちゃったし」
そう。惹かれてしまうのだきっと。
ココにいる人は。
彼女の瞳に。
存在感を見せ付けたかった。
見せ付けられたはずだ。
対峙すればその瞳に映る恐怖。
自分達を見もしない。
彼女は違う。
見るのだ自分達を。
映さないだけで。
「そうか」
面白くないが、致し方ない。
興味を押し隠して、見ない振りをする奴も居るが。
すぐに崩れるだろう。
そんなちんけなプライドは。
「パズル、好きなのか?」
こくん。
「なんでこんなちんまいもん好きかね」
フィンクスの質問を聞き流して、はじのピースを選りすぐっている。
「こうゆうのって、一度箱から出したほうが・・」
そうコルトピが言うが早いか、ばらばらばらという音がアジト内に響いた。
ぽかんとしていると、埋まってしまったフィンクスと、
やり過ぎだろうと突っ込むボノレノフ。
豪快に笑っているのは箱を片手にウボォーギン。
「ってめぇ!!!!!」
「わりぃわりぃ」
「殺す!!」
鬼ごっこを始める2人に興味を示さず、
またピースを選りすぐって今度は箱へ入れていく。
からん。
からん。
ざらざら。
からん。
始終嬉しそうなのが伝わってくる。
昨日は、あんなにも無だったのに。
「くそっ」
いらいらする。
少し乱暴に歩いて自室に戻るクロロ。
団員は気付いているが気づかぬ振り。
皆子供だ。
まだ、癇癪の起こし方しか知らない。
それから3時間。
ようやく端のピースが出揃ったのだろう、
は枠作りに取り掛かっていた。
「ご飯出来たわよ?」
「なんか、変」
「なにがだよ」
「大の男が寄って集って女の子の作業を見つめる構図」
ポカンとしているところを見ると、自覚はなかったようだ。
ざらざらとピースを捜すを、
胡坐をかいたりしながら、真剣に見つめている自分達。
自覚すれば紅くなっていく頬を止められず、
からかわれる前に食卓に赴いたのだが。
「?ご飯だって」
多分、一番懐いてるのだろうコルトピが、
の肩を叩く。
とても集中している所為だろう。
ゆっくりと上げた瞳にまだ、自分達は映らない。
「食べないの?」
ふるふる。
「食べれないんじゃないのか?」
こくり。
「ごめんなさい」
「いいわ」
小さくて、小さくて。
下手すれば聞き逃してしまいそうなか細い声。
けれどしっかりとした謝罪。
パクノダが微笑めば、はまた、パズルへと視線を戻した。
「あいつは?」
「食べられないんですって」
「食えない?」
「理由は聞いてないから知らないわ」
「腕の傷に関係あるんだろ」
「傷?」
「あんた達気付かなかったのかい?」
「マチはいつ気付いたんだよ」
「会ってすぐ」
まあ、そうだろうなと思いながら、騒がしい食事が幕を開ける。
これだけ人数が居るのは久しぶりだ。
食事を終えて戻ってみれば、すでに枠組みが完成していて、
残ったピースを色別に分けているを見つけた。
「早いな」
その声に気付いていないわけではない筈。
けれどこちらに関心を示さない。
彼らにあって自分にないモノは何なのだろう。
それがきっと、彼女を引きつけるか否かの何か。
「お前を拾ったのは俺だ」
こくり。
「俺の命令は絶対だな?」
・・・・・・・こくり。
「こちらを向け」
より分けていた手を止めて、
ゆっくりと向けられた視線。
映らないだけじゃない。
今は、見られてもない。
「っち!!」
ぐいっと襟首を掴んで持ち上げる。
息苦しいはずだ。
けれど彼女は何もしない。
「団長!?」
掛けてくる懐いてしまった団員。
何故。何故。
どさりと落として咳き込むを眺めながら、
クロロは苛立たしさを抱え踵を返した。
後ろでパクノダが水を差し出しているのがわかる。
彼はまだ、命令する事しか知らない。