「終わったか?」
『まあね。いる?彼』
「嗚呼」
『じゃあ、伝えといてよ。約束の口座に・・』
「!待て!!」
「あれだけ無茶しないでって言ったのに!」
「これはだな・・・」
「クロロ嫌い!!」
『・・・・・いるの?』
「お前が話していた娘か?いるぞ」
どごんっ。
という音と共に壊れた扉。
飛び込んできた影と、
もう慣れっこだというように受け止めた小さな身体。
「久し振り」
「つい2ヶ月くらい前会ったよ?」
「久し振り」
「うん。イルミ痩せた?」
「そうでもない」
「ちゃんと食べてる?」
「食べてる」
ぽかんっと見ているのはクロロだけではない。
ゾルディック家の2トップも然りだ。
犬のようにに擦り寄る長男を、
穴が開くほどに凝視している。
「クロロ嫌いになったんだったら、家来れば?」
「まだお仕事終わってないから。ゴメンね」
「じゃあ、これ終わったら来る?」
「ん〜約束できない」
よしよしと髪を撫でて、
もまんざらではない様子。
「とやら、わし等の念を戻してくれんか?」
「あ!ごめんなさい」
思い出して声を上げるのと同時。
消えてしまったバッチと共に戻った2人の念。
変わりに絶状態になった腕の中の彼女を、
イルミは怪訝な顔で見つめた。
「何したの?」
「能力を使っただけ」
「他人を絶状態にする能力か?」
「内緒です」
「そうなると嫁に来てもらうしかないな」
「じゃあ、早速式の準備に・・」
「あれ?」
一瞬の間。
飛び交う殺気。
無くなった腕の中のヌクモリと、
代わりにせなから感じる鼓動。
溜息をついて2トップは出て行ってしまった。
またの手合わせ願おうというシルバの言葉に、
は全力で頭を横に振ってお見送り。
「イルミ・・・貴様」
「はクロロのこと嫌いなんだってさ」
「うっ・・・は俺が拾ったんだ」
「関係ないよ」
「関係ある!」
「関係ないって」
「あるったらあるんだ!!」
まあ、そんな言い争いも、
すぐに終止符を打たれる事になるのだが。
「あたし、餓鬼って好きじゃない」
ほら、ぴたりと。
「イルミ、今日は帰って。また連絡するね」
「いつでも待ってる」
「ばいばい」
手を振って、今度はにこやかに見送る。
しばらくすれば、きつくなる腕の締め付けに、
顔をしかめたは、
そのまま背中越しに感じるヌクモリの主を睨み付けた。
「クロロ」
「は俺が拾った」
「離して」
「は俺のモノだ」
「あたしを思い通りにしたいなら、どうして我儘教えたの?」
きゅっと掴んだ袖口。
誰のものでも構わない。
以前はモノとして生きていたも同然なのだから。
「冗談だ」
「嘘吐き」
「帰るぞ」
「嘘吐きクロロなんて嫌い」
好きとかそんな言葉は要らなくて、
只、貴方のものでも構わないから、縛るのだけは止めて下さい。
そう、言いたかった。
自由を知ってしまったから。
貴方が教えてくれたもの。
「自惚れが当たりなら、離れるしかないよ」
さっさと1人歩いていくクロロの背中に吐いた言葉は、
彼の耳に入ることなく消えてしまったけれど。
自意識過剰。
ナルシスト。
だけど、夢の主には良くあること。
愛してくれているのですか?
[能力説明]
□ 心を操る神の糸
具現化したバッチ(−と+のカウント付き)を他者に貼り付けることで、
そのものの念を無効化したり、増大させたりする。
術者が良しとするまで、そのバッチはいかなる方法であっても剥がすことは出来ない。
■ 制約と誓約
神を信じるかの問いをせねばならない。
問に関しては、どのような形態を取ってもかまわないが、
その者が神を信じるか否かが判る答えが返って来ねばならない。
自分の念を身代わりにすること。
無効化した時間分、バッチを剥がした時点から、自らの念が無効化する。
増幅させた分、オンタイムで自分の念から流れ出ていく。
これらを守れぬ若しくは強制的に止めた場合、死ぬ。