「?どうしたの?」
「なんでもない」
さらさらの髪の塊に顔を埋めて、
は宴が始まってから一度も顔をあげようとしなかった。
楽しそうに杯を掲げる皆を、
ずっと耳だけで感じながら。
「なんでもない事ないだろ」
「なんでもないの」
「、皆心配してるよ」
「じゃあ、ココから離れてる」
「!!」
アイシテル遊びなら、するのに。
イルミみたいに、どちらでも良いよって、
空気を発してくれたら判るのに。
悩むのに疲れる問いは、もう、いらない。
「団長に迫られて、落ち込んでんじゃねえの?」
「はあ?」
「団長、に何したんですか」
「さあな。それより、生年月日と血液型だ」
「知ってるでしょ」
考えないようにすれば良い。
全て忘れた事にしてしまえばいいのに、
自意識過剰は膨らむばかり。
馬鹿な細胞ばかりで腹が立つ。
「見ろ」
己以外の答えを求め、月達の中から外れ、
独りで迷いの路をゆく。
霜月の死を傍らに、赤目の友と決別するだろう。
答えを見つけたと思い込み、またも月を見殺しにする。
赤目の友と会いなさい。
紋章をつければ、悪夢の沼に身を沈めることはない。
答えの知らない問いに悩まされ、究極の2択を迫られる事になる。
逆十時と行く破滅の路か、
偽りの卯月と行く保身の路か、
いづれにしても、一度月から抜けねばならない。
偽りといわれる世界に行ったなら、
もう戻ってこないほうが良い。
貴方は既に、逆十時と決別している筈だから。
そのまま月からも抜けなさい。
殺し屋の血を頼れば、平穏な生活が手に入るだろう。
「どうした?」
「?」
一緒にいては、イケナイということなのだろうか。
知っている未来に沢山繋がる言葉。
やはりあたしは、誰かのイイコでなければ・・・・。
思い当たる節のありすぎる詩が怖くて、
はそれを投げ捨てた。
そのまま、また、コルトピに顔をうずめる。
「何が書いてあるの?」
読み上げられた唄はまるで、
死の先刻のような気さえした。
「・・・・お前、ウボォーを見殺しにしたのか」
だって、彼が生きたくないって言ったから。
だけれどそれでは何も変わらない。
「した」
「てめっ!!」
乾いた音がした。
この頃良く叩かれるなと思いながら、
赤くなっているんだろう頬に、冷たい掌を当てる。
「ノブナガ!何やってんの!!」
「・・・お前なら助けられた筈だろうがよ!!!」
「そうだね」
「っ!ならなんで助けなかった!!」
「だって、ウボォーは負けたから」
自分も、其れが理由だとクラピカに話したはずだ。
負けたから。
生き残っていくなら勝たなければ。
そしてふと気付く。
いい子であったあの頃の思考と、全く同じ回路で物事を考えている事に。
「許さねえ!!」
「だろうね。いいじゃん。もう直ぐあたしは蜘蛛を抜けるんだって書いてる」
「もう1人も見殺しにしてだろうが!!!」
「止めろノブナガ」
「止めねえ!!」
剣が飛んでこないのは、あたしが女で、
クロロのものだからだろうか。
「んん〜ボクの占いも見たら驚くと思うけどね★」
「ヒソカ・・・」
「この"偽りの卯月"ってあんたの事?」
「さあ?ボクは卯月だけど、偽りのつもりはないな◆」
歯車が狂ってゆく。
クロロがこちらを見ていて、
見ていて・・・・・。
「全員一度黙れ」
一括された蜘蛛達は、渋々ながらも腰をおろした。
ただ射抜かれるような視線が、
自分に突き刺さっている事だけを感じて。
「赤目の友は、ウボォーを殺した奴だな」
「うん」
「ヒソカの予言に書いてあった奴と同じか」
「だろうね」
「お前は、どうしたい」
どうしたい?
「死にたい」
悩むのは、しんどくて、
もう、イヤダ。