それは、切なる心からの願い。




「何言って・・」

「っ!!」




そうコルトピが言うのが早かったか、

クロロがの腕を掴むのが早かったか・・・・。




「逃げるな」

「どうしたいって、あたしの意思を問うたのは、クロロでしょ?」

「お前は俺と来い」

「団長、でも予言・・」

「俺と来て破滅するのは今週じゃない。来い」

「何処に行くの?」

「残るとさっき言った筈だ。赤目の場所ならすぐ判るだろう。
さっさと本物の緋の眼を捜せ。コルトピ」




腕を痛いほどにつかまれて、痕が残っているのかもしれない。

けれど、予言になかったこの行為。

きっと、自分にとって重大ではないのだと、は勝手に予想した。




「無理強いは良くないんじゃないかい?」

「ヒソカ・・」

「黙れ。お前はココに残る組だ」




彼なら助けてくれる。

そう思って伸ばした手は、ぴしゃりと叩かれた。

頬を伝う涙が、生温くて、キモチワルイ。




「ホテルベーチタクルだね」

「判った。シャルナーク、コルトピと代われ」

「了解」

、大丈・・」

「来い」




人形になればいいの?

貴方の操る糸通りに動けばいいの?

知らない。

沼の中から救い上げてくれた貴方に、

また押し込まれる事が、こんなにも辛い事。







がたごとと揺れる電車。

学校へ行くのが億劫で、最寄の駅で降りることすら忘れて、

何度も往復した沿線。

先程から耳鳴りが止まらない。



癖だろう。

傍にある、未だ手首に痕がつくくらい握られた腕に、

そっと震える手を這わす。




「耳鳴りか」

こくり。

「やっぱり置いて来た方が良かったんじゃねえか?」

「こいつが認めてくれと言ったんだ」

「だからって無理やり連れて来なくても・・」

「お前が帰るか?」

「いや・・・・・」




そっと肩に回された腕。優しく優しく。

暖かいと思える其のヌクモリに包まれて、

自分は始めて、夜眠る事を覚えた気さえする。



雨の降る中でも、肩に回された腕は離れなくて、

それに安心しきっている自分に、は少なからずも驚いた。

愛しているとかいないとか、そんな事どうでも良くなるくらい。




「尾けられてるな」

「気付かなかった」

「ノブナガ、パクノダ、コルトピは前を追え」

「了解」

「あ・・・」

「どうした」

「ううん」

「思考回路が戻ったか」

「うん」




今思いを馳せる場所は其処ではない。

出てくる2人。

攫われるクロロ。

クラピカにバッチをつけるかどうかを決めてからでも遅くないのだから。

我儘になる事を教わった筈だ。

予言どおりにしてやる必要は皆無。

悩んで、壊れるなら、その時。



目の前に歩いてくる2人。

肩を抱かれたを見て驚嘆しているのが、

他の団員にもわかるほど、眼を見開いて、

とクロロを凝視している。




「それが、くれる人とられる人の違い?」

「そうだね。でも、決定的な何かで隔ててるわけじゃないよ」

「そっか」




ゴンは頭が良い。

ココロに関して、ということだが。

瞳に光が戻ったところを見た。

キルアもなにか思う節があるのだろう。

少し、諦めたような顔をしているのがわかる。




「行こう」

「いいのかよ。俺達は人質なんだぜ?」

「だって逃げないでしょう?」

「なんで言いきれんだよ」

「だって、友達だから。クラピカも、レオリオも」




ちぇっと舌打ちして、

歩いていく3人に着いていく。

両側で大人しく歩いている2人とつながれた掌。

やっぱりアタタカイと思えてしまえる点で、

彼らももしかしたら、既にくれる人になっているのかもしれない。




「照れない」

「照れてねえ」

「照れてるよ」

「「ね?」」

「うっせえ!!」