このような異形な団体を何故、

何も疑わずそこに放っておくことが出来るのか。

それは、ココが、何にでもYesと帰すホテルであるから。




「風ひくよ?」

「あのなあ・・・・」




タオルでゴンの頭を拭きながら、

未だに突っ立ったままで、拭かせてくれそうにないキルアを見やる。

どうやら、この緊張感の無さが御気に召さないらしい。




「もう、これから組み手もしてあげないよ」

「誰が頼むか!!」

「なんだ。強くなりたくないんだ。
今、誰の手も借りず、ここから逃げ出せるくらいに?」

「むかつく」

「なんとでも」




嫌味を言えば素直になる。

可愛らしい子供だ。




「それより、誰か待ってるの?」

「なんで?」

「ずっと扉の方ばっかり見てるから」

「待ってる・・・うん。待ってるかな」




レオリオは驚愕するような表情を見せず、

しっかりとメッセージを残す事に成功していた。

自分の事を聞いていたのだろう。

空気が揺れれば皆が警戒する。

まあ、無駄な杞憂に終わったわけだが。



其の時開いた自動ドア。

見えた母親に、満面の笑みを浮かべて、

タックルをかました。




「コルトピ!!」

「戻ったの?」

「うん。ごめんなさい。心配かけて」

「壊れちゃだめだよ?」

「約束できない」

「じゃあ、団長を選ばせないようにしないと」




団長はコルトピを全力で廃除しそうだ。

そう、団員達が思ったことは放って置いて。



優しい。

アタタカイ。

道を示してくれる導。

けれど、この2人は絶対に強要しない。

にしっかり選ばせる。

まるで、自分たちの子供のように、只、見守って。




って変なもの好きだよね」

「嗚呼。ヒソカも、兄貴もそうだけどな」

はあいつ等を好いているわけじゃない」

「ええ。絶対好きだよ。だって顔が緩んでるもん」

「好きじゃない」

「好きだってば!!」

「何言い争ってんだよ」




途中から呆れて、項垂れてしまったキルア。

そのまま眼をつぶって、時を待つ。




後2分。




「ゴン、ごめんね。クロロって子供だから」

「おい」

「俺は絶対譲らない!!」




こちらも顔を背けると同時、眼を閉じる。

ゴンは少し、が機会を与えてくれたような錯覚に陥った。

そんなわけないのに・・・・。

彼女が、暗号を理解しているなら、

邪魔しに掛かるはずだと、勝手な妄想で。




「パク、もう一度こいつ等を調べろ」

「何を聞くの?」

「何を隠しているかだ」




やばいという感情が、2人の脳を駆け巡る。

其れも直ぐに、彼女の一声で掻き消える事になるのだが。




「何も出てこないと思うよ?」

「何故言い切れる」

「だって、一回やってるんでしょ?」

「疑う要素が多々ある」

「良くわからない。あたしは知ってるけど?」

「ほう。じゃあ、の記憶を引き出してみるか?」




後30秒。




「無理ね。の記憶は読めないと思うわ」

「何を根拠に」

「この前遊びで探ってたんだよね?」

「興味深いな」

「今度調べてみれば?」




後10秒。




「まあいいじゃない。それは後ででも。今は・・」




定刻。




闇に乗じる彼らを見つめる。

そう、見つめる。

夜が自分のテリトリーである自分にとって、

急な暗闇で目が慣れるのは容易い。



骨の折れる音。

肉に食い込むキルアの手。

ゴンの蹴りと、ノブナガの円の気配。

遠ざかっていく2人と、眼があったような気がしたのは、

きっと気のせいではない。




「クロロに怒られちゃうな」




散り散りになった蜘蛛と、

変わらずに其処に佇んでいるの姿が、

雨の中刺す稲妻で、一瞬だけ浮き彫りになった。

まるで、そこだけが舞台上であるかのように。