「この事か・・・?」
射抜くような、侍の瞳。
「?」
「お前が見殺しにする2人目は団長の事かって聞いてんだよ!!」
「其の話は終わった筈でしょ。先に状況把握だよ」
「質問の答えが先だ」
「違う。信じる信じないはノブナガに任せるけど」
不甲斐無さからか、怒りからか。
それでも頭を回転させる事が出来る彼が、凄いと思った。
「、大丈夫?」
「なんか、コルトピの最初の台詞みたいになってる」
「そうゆう状況を作ってくれてるのはでしょ?」
「うん。そうだね。ゴメン。大丈夫だよ」
決めた事は、変えたくない。
それでも、他人の意見を聞けない人にはなりたくないから、
怒りもいらいらも不安も全部、今は捨てる。
なんとかして、彼女と同行しなければ。
携帯から聞こえてくるクラピカの声。
怒りに満ちた、けれど決意の揺らいだ声。
ゴメンね。
今度は邪魔しちゃいそうだよ。
「パク」
「何?」
「従っても大丈夫だから」
「判ってるわ」
マチの一声が聞いたのだろう。
こちらは一点の迷いもなさそうだ。
出て行ったパクを、追うや追わんやでもめる声を、
数秒聞き流した末、
散り散りになっている団員の背を一瞬で蹴って回り、
一箇所に集めた後、機械仕掛けの神様を発動した。
「「・・・・・・・・」」
「おかえり★」
「・・・・・・ダメだよ」
「何がだい?」
「外に出てねとはいったけど、悪戯してねとは言ってない」
「◆」
「何しやがってんだよ!!」
「え、だって、帰らないとクロロ死んじゃう」
「お前莫迦ね。ワタシ達行てもすぐに鎖野郎殺れるよ」
「黙りな!の行動は正しい。ここでパクを待つのが最良だね」
とりあえず旅団は全員戻せた。
其の後だ。
彼がパクノダに針を刺す前に、飛行船にたどり着かねばならない。
携帯のボタンをプッシュする。
もしもし、もしもし。
出てください。
あたしからの、初めての信号。
「こんな時に誰に電話してんだ?」
「彼氏とか?」
「団長が聞いたら卒倒するから止めときなよ」
繋がって。
『・・・・・もしもし』
「クラピカ?」
『嗚呼』
「出てくれて良かった。パクはもうそっちに行ってる?」
立ち上がったのは団員全員。
ただ、ヒソカだけが、彼女の前に、
姫を守る騎士の如く、トランプ片手に佇んでいる違い。
『まだだ』
「あたしも行きたい。行かせて」
『ダメだな。その様子だと邪魔になる』
「じゃあ、勝手に行くよ。場所も知ってるしね」
『何故だ!!』
「クラピカには話したでしょ」
あたしが、異質である事。
「行かせて」
『・・・・・時間に間に合えばだ』
「判った」
携帯を切って立ち上がる。
殺気は大半、未だこちらに向いたままだ。
「いいよ。無駄な体力使わなくて」
「場所を言え」
「イヤだ」
「行かせてやれ」
「お前は黙れ!」
「急がないと、パクが死ぬよ」
「団長じゃないの?」
「神様を信じるならどいて」
さあ。
答えて。
扉を開くキーカード。
「信じてねえからどかねえ」
「同感だ」
「にしては頭の悪い質問だよ」
「どかないのは、信じてないと取るから」
いくらなんでも、この人数を相手にするのは無理だ。
だから、神様、力を貸してください。
バッチが浮き彫りになった瞬間に、ふっと消えるオーラ。
「なんだ!?」
「あたしの能力。急ぐの。じゃあね」
念を消すのは、驚いたその一瞬で良い。
すぐさま、心を操る神の糸を解除したは、隙の出来た団員の間を縫うように走った。
タイムリミットは8時だった筈。
時間はない。
雨の中ふと思い出したのは、
彼に拾われたあの日のことだった。