息が切れる。
血の味がする。
こんなに全力疾走したのはいつ振りだろうか。
念の相対量が少なくてよかったと、は切実に思った。
でなければ、ここまで一生懸命、
自身を鍛える事をしなかったかもしれない。
今まさに飛び立った飛行船の窓を割って、中に入れば、
まだ交渉中だったようで、
クロロに対する条件を、クラピカが述べているところだった。
「!!」
「痛い」
「当たり前でしょ!!何やってるの!」
「うん。ちょっと無茶」
鎖越しにでも、クロロが嫌な表情をしているのがわかる。
「やっぱり怒られるのかな」
「でしょうね」
「クラピカ、話しを続けて」
「何もせずに、また、見守るつもりか」
「どうするかは、私が決める」
気になるのは、自分も旅団員として入っているのかということ。
証がないなら、口交渉でもいけるだろう。
自分が一言旅団を抜けると言い、彼が了承すればいいだけの話。
「」
「なあに?」
「貴女はいいの?」
「何が?」
「団長の条件よ」
「クラピカはパクに決めろって言ったよ?」
「でも・・・・」
「クロロだって依存はない筈。あたしがココにいること以外は」
判ってるじゃないかと、眼光が光る。
でも、気にはしない。
自分のしたい事をしたまでだから。
パクノダの条件が言われる。
OKという是の答えをパクノダが返す。
自分の知ってる未来は、ココまで。
「なんだ!?」
「パクに攻撃はさせない」
「!?」
「邪魔するかどうかはあたしが決めるって言った」
「念能力が・・・」
「出せないよね。消えてるから」
「では・・!!」
「安心して。あたしが消せるのはその人がまとっている今の念能力。
クロロに使って、クラピカから離れた念は消せないから」
負の懐中時計が、カチカチと時を刻んでいる。
「何故、団長の鎖を刺させたの!貴女なら・・・・・やっぱり、
の見捨てるもう1人は、団長だったということ?」
「ノブナガと同じこと言うんだね。違うよ。あたしが見捨てるのは、パクノダだった」
「わ・・・たし?」
「針を刺される。ゴンとキルアをつれてくる。
帰った貴女は、結成時のメンバーに記憶弾を撃って、死ぬ」
これが、あたしの知っていた未来。
「ちっ!!」
「無駄だよクラピカ。念の使えなくなった貴方じゃ、あたしには勝てない」
「煩い!!!」
「パクを殺されちゃ困るの。だって、ご飯作ってくれる人がいなくなるんだよ?」
しばしの沈黙。
クロロが笑いを必死に堪えていて、
センリツはぽかんっとこちらを見つめている。
クラピカは繰り出そうとした拳を、中途半端なところで止めて、
を凝視していた。
「それに、クラピカは、勝てるよ」
「なんの話だ」
「例え情報を漏らされたって、メンバー全員に。たいまんならの話だけど」
「何を根拠に・・・」
「あたしが今まで生きてきた時間かな。保証するよ。あ、クロロ以外は」
必死に笑いを堪えるクロロが、皆の目の端に映っていただろう。
「戦いを挑めばいい。皆殺しにしたいならすれば良い。
けど、あたしが旅団員である今は、させられないから、クロロ、あたし、旅団を抜けます」
今度はクロロが唖然とする番だ。
隣のパクノダも同様に。
「旅団を抜けないと、あたしはクラピカの邪魔をすると思う。
復讐って概念は、やっぱり理解できないけど、仕方ないよね」
「何故・・・・」
「友達だから。戦うものが敵対しているとは限らないよ」
「・・・・・・っ」
「2人の安全はあたしが保障する。信じられないのなら、あたしに鎖を刺して」
沈黙が飛行船を支配する。
デメリットは多すぎるが、気付いてしまったココロ。
今まで言い聞かせた鋼の砦も、今や崩れ落ちそうな砂のお城。
「条件がある」
「なあに?」
「この交渉が終わってから、旅団員に接触するな。念能力の使用もだ」
「ん〜・・・・。その旅団員って、クロロ含む?」
「当たり前だろう」
「・・・・・判った。こっちからも条件出していい?」
「?」
「パクとあたしが交代するの」
「何の話だ」
「今からパクは家に帰る。そこでお役目終わり。
後はあたしが、交渉も全部する。いいでしょ?」
最後は団長に向けた。
「!?」
「パクは、これからもみんなのご飯作ってくれたら良いよ」
「良いだろう」
寂しいけれど、貴方にある役目は、
だって誰も変われないから。