「暇だね」

「まあね」

「なんかもっとこう、無理やり修行とかさせられるのかと思ってた」

「なんで?」

「ゼノさんもシルバさんも乗り気だったから」

「何に?」

「イルミとの結婚」

「する気になったんだ?」

「違うってば」




ゾルディック家に来て1週間。

未だヒソカとの連絡は取れず、朝食(毒無し)を食べたり、

昼食(毒無し)を食べたり、夕食(毒無し)を食べたり、

いたって普通の生活を送っていた。




「仕事ってないの?」

といたいから全部蹴ってる」

「・・・・・・・・ダメじゃん。ちゃんと仕事しないと」

はオレといたくない?」

「いたいから来たんだけど」

「じゃあ、いいじゃん」




ここにきてからずっと、イルミはの手を離さない。

風呂やトイレは別として。

イルミに聞けば、なんとなく。

としか返ってこないので、それ以上は追求しないが。




「そういえば、家族の人はどうしてるの?」

「どうして?」

「全然会わないから」




1週間ココで生活しているにもかかわらず、

イルミの他に会った人といえば、

初日のカナリアくらいで。

これはおかしいと言って良いのか悪いのか。

いまいち暗殺業界の内情を知りえない

どうでもいいことに悩んでいたりする。




「母さんは帰郷。親父は子守。爺ちゃんは修行。ミルキは仕事。カルトは家出」

「夫婦仲、危ないの?」

「違う違う。向こうの家でなんか問題があったらしいよ。
家名に泥が塗られるくらいヤバイからって、すっ飛んでった」

「ふうん。シルバさんは病気か何か?」

「は?」

「だって篭りって」

「篭りじゃなくて子守」

「・・・・・・・・・頑張るね。キキョウさんも」

「アルカの修行だよ?」

「なんだ」




最後のカルトの家出は、思い当たる節があるので聞かない。

十中八九当たっているのだろう。

イルミが何も言わないところを見ると。




「えっと、曾お爺さん、マハさんだっけ?は?」

「さあ。あの人あんまり出てこないから。棺桶じゃない?」

「・・・・・・・・大分酷いこと言ってるの気付いてる?」

「そうかな」




天然か、策士か。

おそらく前者なのであろう。

大広間からイルミの部屋まで、一般人の歩くスピードで10分ほど掛かるため、

未だ慣れない、長い会話。




「腕組まない?」

「なんで?」

「組みたいから」

「断っても組むくせに」

は嫌なの?」

「・・・・・いいよ」




なんだかんだ言って、

ヒソカの次にスキンシップが多い気がする。

何のためにと考える事は、この家に来て数分で止めた。






「なあに?」

「今日は作らないの?」

「何を?」




知っていて問う問いは、少なくない。

今だって。




「ホットケーキ」

「昨日作ったでしょ」

「今日も作って」

「昨日作る時に、明日はなしねって言ったら、うんって言った」

「そうだっけ?」

「都合の悪い事は忘れる脳みそなんだね」

「聞こえない」

「しっかり聞こえてるじゃん」




右から左に通り抜けていく言の葉達。

壁にぶつかって通り抜けて、彼らは何処へ行くのやら。




「親父達も呼ぶから」

「どうゆう理由?」

「アルカもくるかも?」

「頼りないな」




首をかしげて、こちらをずっと見ながら。




「何味?」

「任せる」

「昨日は抹茶味に餡子とホイップだったね」

「美味しかったよ」

「はいはい」

「王道がいい」

「さっき任せるって・・・」

「王道がいい」

「メイプルシロップあったかな?」




溜息をついて、大広間に逆戻り。

だってキッチンは其処にしかないから。

ココに来て1週間。

慣れてしまった逆戻り。

だってあたしは、




つぶらな瞳に弱い…。