秋晴れの素晴らしい日曜日。
散歩日和の日曜日。
首輪とリード・・・・いや、ロープを取って、さあ、お散歩に。
「無理」
「大丈夫だって」
無気力な眼をこちらに向けながら、
自分が走るのを今か今かと待ち構えている、
はっきり言って、可愛いとは言い難い、犬。
「あたし今、念使えないんだけど?」
「蜘蛛で鍛えてたなら問題ないよ。多分」
「なんだか凄い心許無いね」
決めた事は、絶対に実行する彼だから、
覚悟を決めた溜息を2つ3つ吐いて、
は、屈伸をする。
動きやすい服装ではあるが、リーチに差がありすぎるのだ。
「準備いいよね?じゃあスタート」
「あたしの返答聞いてない・・・・よ・・・ね?」
「早く逃げないと食べられるよ?」
「イルミの莫迦!!」
莫迦あ莫迦あ莫迦あと、エコーが掛かるほど広い庭で、
ミケのお散歩、基、との(命をかけた)鬼ごっこがスタートした。
時を遡る事、数分前。
今日も今日とて、毒入りではない朝食を、静かに食べている最中。
「もそろそろ鈍って来たんじゃない?」
「そうかな?判んないや」
「修行が必要だよね。うん。今日は晴れてるし、外で修行しよう」
「待って」
「メニューは適当でいい?」
「イルミ?」
「俺も鈍るの嫌だし、一緒にしてあげるから」
そうゆう問題ではない事に、
一切気付いていないのか、気付かない振りをしているのか。
「修行するなら、ミケの散歩もしておいてくれ。この頃太ってきていかん」
「判った。じゃあそれと・・」
「それだけでいいじゃろ。今から昼まで3,4時間はある」
「そうだね」
ほうらこれで心置きなく出来る。
なんて、凄く達成感に満ち満ちた顔の3人を凝視したまま、
は引きずられる様にして、外に出てきたのだ。
シルバとゼノは、が来たと、つい昨日知ったらしく、
昨日の晩餐から、お食事を共にさせて頂いている。
キキョウは未だ帰ってきていない。
「ほら、追いつかれるよ」
「判ってる」
森の中を縫うように全力疾走しながら、
クロロの時より必死なのでは・・・と、
少しばかり苦笑してみたり。
旅団の皆はどうしているだろう。
皆元気にやっているのだろうか。
そろそろゲームに興じていてもおかしくない時期だ。
なのに何故か、ヒソカから連絡が来ない。
一度こちらからかけてみるのも良いかもしれないと、
ほんの一瞬、緊張の糸を解いた瞬間だった。
「あ」
「あ〜あ」
ぱくりと後ろ襟首を銜えられ、木を越え、イルミを越え、
向こうの方まで見渡せる位置まで掲げられる。
が、まあ、この程度を抜け出せないようでは、
蜘蛛を名乗っていた実力には見合わないわけで。
上手い事身体を反転させたは、そのままミケの頭の上に腰をおろした。
「よしよし」
意外と柔らかかった毛を、ふんわりふんわり撫でてやれば、
気持ち良さそうに目を細め、
湖の畔で腰をおろした巨大な犬。
するんっと頭から下ろされて、
抱きかかえられたが喉元を掻いてやれば、
可愛くはないけれども、鳴き声をあげる普通の犬に大変身。
「懐かれたね」
「そうなの?」
「まあ」
「・・・・・痛いです」
手を休めれば、かじかじと噛んで来る。
もっとと言っているように。
だが、可愛く表現しても、所詮は巨体。
でなければ、最初の一噛みで手を失っていただろう。
「羨ましい」
「何が」
「それ」
そう言って、何の許可もなしに、
ころんっと人様の膝に寝転がる暗殺一家の長男様。
どうやらミケは眠ってしまったようで、
器用にイルミの髪も撫でていた左手を一瞬止める。
ぐさり。
「イルミ?刺さりそうだったよ?」
「刺そうと思ったんだから当たり前だよね」
「なんで」
「オレは噛めないから」
さっさと続けろという事なのだろうか。
むかつくから、デコピンをしてやれば、倍の釘が飛んでくる。
それが数時間に及んだかどうかは、2人のみぞ知るところだが、
昼食をすっ飛ばした晩餐で、傷だらけの2人を見れば、
きっと明日も、
じゃれあう。