「やっぱり結婚前はデートだよね」
「へ?」
意味の判らない見解で、
朝っぱらから腕を引かれて連れて来られた衣裳部屋。
ぽいっと放り込まれて、早半刻が経過していた。
「、早く着替えて」
「・・・・・・・・・何故」
「デートするから」
このまま会話していたら、きっと2時間くらい続くだろう事を、
何故だか学習してしまったは、
渋々、ピンクや白のフリフリの中から、
マシなものを見つけて、数秒で着替えた。
今日のお召し物は、黒のタートルに赤のタータンチェックスカート。
12月に入ったために、クリスマスムード一色な町並み。
ちょっと意識したかと聞かれたら、是と答えるしかない。
「それだけ?」
「寒いかな?」
「・・・・・・・・・これ羽織って。行くよ」
ショップのように並ぶ服の中から、放り投げられた服。
突っ込む事も忘れて、ばさりとかぶされた白のボレロケープを、
もごもご言いながら羽織れば、既に街に到着していた。
「降ろして、イルミ。自分で歩ける」
「腕組む?」
「組むから」
姫抱っこされたままなんて、恥ずかしい事この上ない。
イルミに言わせれば、の腕は気持ちがいいらしい。
肉がついているということだろうか・・・・。
そもそも其処まで行けば、もうそれは、セクハラ発言。
「じゃあ、買い物」
「何か欲しいものでもあるの?」
「別に?」
じゃあ、行く意味は無いのではないかと思いつつ、
組んでいる腕が外れないため、着いていくしかない。
引っ張ってはいるものの、
歩幅を狭くしてくれるのは、彼なりの優しさ。
緑や赤や金色や。
所狭しと並ぶクリスマスの飾りとイルミネーション。
まだ朝だというのに、ちかちかと点灯している。
忙しい限りだ。
「これ、に似合う」
「そう?」
「それも」
「そんなにいらないよ」
「オレからのプレゼント」
「え?」
「結婚式の時に・・」
「いらない」
「冗談だから」
「冗談に聞こえないんだけど」
カフスとそろいの指輪。
さっさとレジに持っていって会計を済ましたイルミ。
「あ、付けて行くんで」
「畏まりました」
おつりを受け取っているイルミは、
こちらを凝視して、値札の外された2つのアクセサリーをが付けると、
ふと、笑ったような気がした。
それはきっと、気のせいではない。
「折角イルミが買ってくれたんだし」
こんなにも傍にいたくて、
少しでも自分の証を付けていて欲しい。
自分のものだという印は、1つだってないけれど、
それでも満足できてしまうのは、重症のような気がする。
「イルミも何か欲しいものないの?」
「今はない」
「あたしだけ貰ってばっかりじゃ悪いよ」
いつだって君は、惜しみなく与えてくれるのに。
自分が貰いすぎだという自覚さえあるくらい。
まあそれは、に無自覚なものだから致し方ないのだが。
「よし。帰ろう」
「何?」
「帰るよ」
そういってまた横抱きにされたは、
ものの数秒で、ゾルディック家の門前に立っていた。
嵐のようなデートは終わりを告げる。
「もうすぐお昼ご飯の時間だ」
「そうだね」
「厨房行って来る」
「一緒に行く」
「はいはい」
きゅっと首に回された腕。
夜も安心して眠れる、鼓動の子守唄が聞こえる。
あたしの作るオムライスが好物らしい、
そんな君は、いつでも、
自由気まま。