クリスマスまであと5日。
そろそろ向こうに行かなければ、余裕がなくなる。
出来れば、今日中に行きたいところだ。
ヒソカと連絡を取って、
クロロをゲーム機から、せめて一街分くらい遠ざけてもらわないと困る。
あの団長なら、こっそり伺う事をしてそうであるから。
「イルミ、携帯かえして」
「イヤだ」
「ヒソカに連絡取りたいの」
「だからヤダ」
「もう良い」
デートに行った次の日からだ。
イルミは四六時中、の携帯電話を弄び、
あれから一度も返してくれた事はない。
幸いにも、自分が使う事がなかったから、今までは放っておいたわけだが、
今となってはそうも行くまい。
「何処行くの」
「執事室」
「なんで?」
「外線貸して貰う」
「・・・・・・・ヒソカの番号覚えてるんだ」
「まあ、何回もかけてるしね」
扉を閉めようとした腕を掴んで、引き戻す。
ふらついたを受け止めれば、
必然、後ろから抱きすくめる形になるのだ。
「行き成り引っ張らないで」
「怒ってる?」
「判ってるなら、携帯返してよ」
「ココにいればいいのに」
「クラピカの念、解かないと、あたしが困る」
「オレがいるじゃん」
役3ヶ月、一緒に暮らしてきたから、
余計に離したくなくなった。
好きだ好きだといっても、冗談だと流されてしまう、
君を縛り付けるための言葉。
どうしても、こちらを振り向かせたくて仕方ない。
「イルミは嫌いじゃないよ。だからココで暮らしてたんだし。
でも、旅団の皆に会えないのは悲しいし、イヤだって、やっぱり思うから」
抱きしめる腕に力をこめて、
の携帯を、掌の上に落とす。
嫌われたくはない。
そうやって返せば、いい子と撫でてくれるアタタカイ手があって。
とてもとても安心する。
ふっと、肩の力が抜ける。
「もしもしヒソカ?ゴメンね、連絡遅れて」
『準備はイイのかい?』
「うん」
『クロロは今、全く別の国にいるから★』
「先に手、回しといてくれたの?」
『は嫌がるだろ?』
「ありがと」
『とボクの仲じゃないか◆』
「どうゆう仲か判りかねるけど、ホントに助かる」
『年明けには帰ってくるだろうから、急いだ方がいいかもvv』
「判った。じゃあ、今からでも行く」
『操作の仕方は?』
「知ってるから大丈夫」
『メールしてくれたら、スタート地点まで迎えに行くよ★』
「色々ゴメンね。じゃあ、今日の夜」
『また後で◆』
ぷちりと通話ボタンを切って、イルミに向き直る。
「オレを捨てるんだ」
「なんか、誤解を受けそうな物言いは止めて下さい」
「オレの事好き?」
「好きだよ」
いつだって、あたしといてくれる所も、
1人になりたい時を分かってくれている所も、
考えなくていいように、引っ張っていってくれる所も、
全部。
「大好き」
押し倒してしまおうかと、本気で考えたイルミだが、
やっぱり止めた。
きっと受け入れてくれるだろうけれど、
なんとなく、自分が許せなくなる気がしたから。
「お昼寝しようか」
「そのまま監禁しようかな」
「ほら」
「聞いてた?」
「だって、イルミは、絶対にそんなことしない」
静かな脅し。
けれどそれは、遊びの脅し。
決して実行される事のないもの。
「今度来た時は、イルミの好きなもの作ってあげるね」
「ホットケーキ」
「ご所望のままに」
きゅっと肩を寄せ合って、お互いのにおいを感じながら。
木枯らしが吹いている筈の、窓の外は暖かそう。
いつもは使われてない筈の、布団の中は暖かい。
オレから伸ばす筈の、君の腕の中は、もっと・・・・。
最後の日くらい。
ね?
あたしから誘って、
のんびり日向ぼっこ。