ゲーム機の前で重大な事に気づいた。
自分は今、念が使えない。
ということは練も出来ないわけで。
「どうしようかな」
とりあえず、待っていてくれているかもしれない奇術師に電話しなければ。
「あ、もしもし?」
『もう着いたのかい?』
「ううん。あたし、念能力使えないの忘れてた」
『・・・・・・・★』
「莫迦だよね」
溜息をつく声が聞こえる。
一か八か、アベンガネにかけるなら、29日まで待たなくてはならない。
「こっちでなんとかする」
『でも、除念師はこの中だよ?』
「知ってる。でも、行けなきゃ意味無いでしょ?」
『まあね◆』
「また連絡する」
『気をつけてvv』
「うん」
そんな莫迦をした次の日の朝、は別の番号を押していた。
待っているだけなんて、やっぱりイヤだ。
「ゴン?」
『!!久し振り!!』
「うん。あのね、単刀直入聞いていい?」
『何?』
『だって!?変われよ!』
『誰なんだわさ』
『ちょっと2人とも静かに!!』
「リストにアベンガネって言う人いると思うの」
『なんでがリストの事?』
『もうこっちにいるんじゃねえの?』
『だから誰なんだわさ!!』
「その人とコンタクト取って欲しい」
『いいけど、理由は?』
「教えられないじゃダメ?」
『ん〜いいよ』
言うと思った。
彼なら、あたしに何も聞かない。
翳った瞳に宿った光を見た日に、
自分達が、にとってどんな位置にいるのか理解したから。
「ありがとう。今度、ケーキでも作って持っていく」
『ホント!?やった!』
『なんの約束したんだよ!!』
『キルアには内緒!』
『教えろ!!』
『あ、、聞こえる?』
「アベンガネさん?」
『なんだ・・・?』
少しノイズが掛かっているが、
決して聞き取れないほどじゃない。
「能力について話したいことがあるから、
携帯教えて欲しいの。お金はいくらでも払うから。
もし、請け負えないって言うなら、切って下さい。諦める」
しばしの沈黙。
勿論、沈黙しているのはアベンガネであって、
キルアとゴンは未だに言い争っているから、
甚だしい雑音は響いてくるのだけれど。
必要最低限のことだけしか言わない。
それでも、頭の良い彼は判ってくれたのだろう。
OKと返事が返ってきたときには、本当に笑顔になれた気がする。
ゴンとの通話を切って、今度はアベンガネの方へ。
「除念をお願いしたいんです」
『どのくらいの』
「多分、とても強い。貴方についてるカウントダウンくらい。下手したらそれ以上」
『面白い。いいだろう。何処の港で落ち合う?』
「何処でも。貴方の都合のいい場所で」
ゴンには気付かれただろうか。
判らない。
けれど、後悔はしないよ。
「君が?」
「はじめまして」
「で、其の念・・・・心臓に刺さっているものか」
「ご名答。どうです?」
「精霊を出してみないことには判らないな」
ただ、面白そうで。
金も手に入ることだしと請け負った仕事。
ダイレクトで自分を指名してきた少女が気になっただけ。
詮索はしないのがこの仕事の基本。
けれど、本当に取引しか眼には言っていないに、
珍しさを覚えたのも事実。
何かしら、驚くとか、反応を示すものだから。
「普通に価値を感じないから」
淡々と語った少女は、
久し振りに戻ってきたのだろう念の感覚を確かめながら、
身体に巻きついている、かなりの大きさの精霊を見やって、
「クロノス」
人形の口の中へと足を踏み入れた。