目の前で飛び散った鮮血に思わず、
隣にいたキルアの服を、強く強く掴んでいた。
「あ、って、血、苦手だっけ?」
「ん〜大丈夫になった筈なんだけど・・・・」
「苦手なの?大丈夫?」
「多分ね」
「ホントかよ」
「うん」
愚かだと思える行為を咎めるほど、
あたしは偉くもなんともないけれど、
何かに釣られる人の弱さも、嫌というほど知っているから、
弱虫の自分を見ているようで、いらいらは止まらない。
叫んじゃダメよ。
あたしも、弱虫の一人だから。
「いてっ!」
「あっ・・・・」
「キルア?」
「ごめん・・・」
「どうしたんだよ。さっきからおかしいぜ?」
「おかしくないよ★」
「どこが!?だっていつもこんなじゃなかっ・・・っ!!」
「ヒソカ、殺気しまって」
きつく握りすぎて、爪痕が付いた、キルアの手を握って言う。
もう一度謝罪を述べたのを合図にしたように、
レイザーの話が始まった。
「?」
「話、聞かなくていいの?」
「いや・・・まあ」
「ホントにごめんね」
「言葉の上で理解できる事じゃないから」
「もし、その状態を目にしたなら、経緯くらいは話すよ」
ハンター試験時に見せたあの顔だ。
会ったばかりではなくなった今。
けれど、話したくなくなったかもしれないし。
掌には、もう、先程の事など嘘のように、
冷えた感触しかなかった。
さて、どうするか。
コートに立ちながら、ゴレイヌの出した白い念獣を見つめていた。
「(確か、白は自分と位置を変える・・・・筈)」
始まったボールの押収を見つつ避けつつ考える。
さあ、どう未来が変わるのか。
そうこうしているうちに、ゴレイヌが外野へ行き、
ツェヅゲラがアウトになってしまった。
「ねえ審判」
「なんでしょう」
「ツェヅゲラが、外野にも内野にもカウントされずに、あたしが分裂した場合は反則?」
「メンバー交代と見なされ反則ですね」
「そっか・・・・」
陰で隠してばれないだろうか。
レイザーだって相当の使い手だ。
まあ、一瞬でやれば問題ない。
「反則するとどうなるの?」
「退場して頂きます。勝った時点での人数にも含まれません」
「それでも、あたし達は既に3勝してるから、ゲームに勝ったことにはなるよね?」
「もし、このドッヂボールに勝てればの話しですよ」
いやらしい笑いは無視だ。
これで、気付かれても構わない事が判明した。
「クロノスのことかい?」
「そ。出せるなら出した方がいいかなと思って」
しばらく、またボールの押収を眺め、
13にボールを取られてしまったヒソカが、
少しばかり悔しそうに聞いてきたから、
とりあえずの返事をした。
次が・・・勝負だ。
一世一代と言っても過言ではない気がする。
は、レイザーのボールに全身系を集中させた。
放たれる。
近づいてくる。
ゴンに触れて、音が・・・・。
どごっ!!!という凄まじい音が2度響き、
ぱらりと天井の砂が自分たちのコート内に落ちてきて、静寂。
先程の轟音が嘘のように、
全てが静まり返っている。
「あれ?」
「ゴンお前、当たったよな?」
「と、思ったんだけど」
「硬で手だけに集中させてたしね★」
「え――――――・・・・・・・・今のは・・・」
「アウトになるよね。ルール状」
「オーラの絶対量が少ないから、ノーマークだったな」
レイザーがそう言ってを見やる。
ふっと笑ったは、そのまま膝の力が抜けたのだろう。
かくんっとコート内に崩れ落ちた。
「・・・が・・・何かしたの?」
「そうだね」
「クロノスか◆」
「ゴンに、怪我して欲しくなかったから」
咄嗟に。
そう口では言ったけれど、ヒソカは気づいているのだろう。
自分が知っていて、そうした事。
思い描いた自分の成れの果て。
ぞくりと背筋に感じた戦慄は、雷の様に迸る。
「ありがとう。オレ、バック、宣言するから」
「頑張って」
取りはいつだって、主人公組みと決まっているから。