そんな上辺だけなんて疲れるだけだ。

前みたいに。

頭が活動を停止したがる。




「な」

「もういいだろう。フェイタン、お前が認めてないのは判った。
認めたくないならそれでいいと、俺は最初に言った筈だ」




どうやら話はお開きのようで、

舌打ちをしたフェイタンが遠ざかるのと同時、

緊張していた空気がぱきりと折れた。

ヒソカは直ぐにそこから姿を消したし、

一息つきたい団員はキッチンへと赴く。

結局広間に残ったのはいつもの面々+シャルナーク。




疲れた?」

「平気。ありがとう」

「久しぶりだな」

「ボノレノフ、元気だった?・・・・・穴、増えたね」

「判るの?」

「コルトピは判らないの?」

「普通は判らないだろ」

「そう?」




静寂の中で暮らしていたから、

少しばかり他の団員より、気配に敏感なのかもしれない。

両手を其々繋いで定位置へと赴く。

誰もが2人のポジションをうらやましいと思っていたのは内緒だ。






「なあに?」

「包帯替えてないだろう」

「・・・・うん」

「傷が増えたな?」

「なんだと?!」

・・・・貴女・・・・」

「・・・・・・ゴメンナサイ」

「全然気付けなかった」

「腕を出せ」




また赤黒くなっている包帯。

上から切りつけた痕が行く筋にも連なっている。

くるくると新しい包帯に変えながら、

彼女が痛みを求める理由の判る自分が嫌になった。

止めるのが酷だと思ってしまうから。




「ぴりぴりする・・・・」

「当たり前だよ。それだけ切ってれば。出血量は差ほどでもないだろうけど」

「シャル、そんな考察はいらない。、何故止めないんだ」

「・・・・・・・・」






きゅっと、新しく巻かれた腕を押さえるつける。

頭に鳴り響く声は、今も反響しているからだ。




!」

「・・・・・・・・・っ!」




がりっ。

塞がり切らない筋につめを立てれば滲んでくる紅色。

ダメダダメダダメダダメダ。

危険信号がなっている。

今すぐ傷をつけなければ。




爆発する。




しゅっ。

つぅ。




!!ボノレノフ!何故止める!!」

「ぼくもボノレノフに賛成だよ」

「コルトピ!?これじゃあは・・」

「悪いが団長、これだけは譲れない」




いつも黙って着いてくるだけだった彼が、

初めて発した自分の想いだ。

ぽたりぽたりと雫の垂れる手首を、先程よりも虚ろな目で見つめる。

が戻ってしまう。

折角、折角・・・・・。




、部屋へ行こう」

こくり。

「ボノレノフ、説明しろ」

が先だ」

「・・・・・・・・・判った」




ボノレノフは軽々とを持ち上げ部屋へと向かう。

コルトピも後に続いた。

きっと、旅団の中で、1番を理解しているだろう2人。




「治ったと・・・・思っていた」

「病気みたいに言うもんじゃないよ。団長」

「何がなんだかさっぱりだな」

「フィンクスがあそこで叫ばなかった事に驚きだわ」

「オレだって言葉失うくらいするって」




自分達は、死にたいなんて感情、持った事など一度もない。

愚かしい事だとさえ思えてしまう。

けれど君を見ていれば、

何故だか知りたくなってしまうその世界観。



知っているようで知らない全て。

手に入るようで入らない全て。

活字では補えない知識。



戻ってきた2人に寄ってたかる。

何故だ。

それが知りたい。




はどうした」

「コルトピが見てる」

「で、何故あの時俺の手を止めた。返答によっちゃ・・」

が痛みを欲するのは、十中八九生きるためだ」

「意味が判らん」

「理屈じゃない」

「どうゆう事なの?」

「植えついてしまった性とも言うべきもの。
が俺達の制止を他所に、何かを強請った事があったか?」




いつもいつも顔色を伺って。

叫んではダメ。

強請ってもダメ。

だめだといわれたらダメなものはダメ。

いい子にしていなさいという事。



そうでない自分を抑制できる術を見つけた。

それが、ああいう方法だっただけ。




「治る治らないの問題じゃない」

「確かに理屈じゃないね」

「わかんねぇ」

「判らなくて当たり前だ」

「まるで自分は判っているみたいな言い方だな」

「しきたりに縛られるのは俺も同じだからな」




それを苦痛と思ったこともあったのかもしれない。

今ではそのしきたりに感謝さえするが。

ものを見る角度を変えられるか否かは、彼女自身の問題。



自分達には理解し得ないもの。

君の事は何だって、モノにしたいと思うのに・・・・。

願えば願うほど遠ざかっていく。