「ゴンチームの勝利です!!」




そう、宣言された瞬間だ。

彼女が、自分の頭に拳骨を繰り出したのわ。




「無茶な戦いはしないって言ったくせに」

「善処するとしか言ってないよ★」

「莫迦。大莫迦。阿呆。変体」

「最後は関係ないじゃないかい?」

「指・・・・痛かったよね・・・・・」

のおかげで一本で済んだんだから、良いじゃないか◆」

「それでも痛いよ」




俯く彼女の頭を、そっと、優しく撫でてやる。

今度はぽすりと鳩尾に拳。

全く力のこもってないそれににんまりと笑って、

少しの間、さらさらの髪を堪能していた。




「おー――――――い」

「2人の世界作ってるとこ悪いけど、行くわよ」

「あ・・・・」

「照れてるも可愛いねvv」

「・・・・・・・はいはい」




後ろから付いていきながら、

は悩んでいた。

キルアの手の傷の事。

ツェヅゲラはまあ、自力で直すだろうし、

ゴンも念が回復すれば其れで良い。




「またくだらない事悩んでそうだね★」

「ま、そんなトコ」

「なあ、達も一緒に行こうぜ」

「ボクはおまけかい?」

「行かない。それよりキルア、手の傷、治したい?」

「は?治せんのか?」

「治せる。けど、傷を負ったままでの対戦経験はあった方が良いと思う」

「治してくっ・・!!」

「要らないわさ」

「そっか」




想いっきり殴られたのだろう。

本当に痛そうだ。

撫で撫でと、涙目になって声も出てないキルアに、少しばかり同情した。




「なんでだよっ!!治ってた方が良いだろ!!」

「その子の言うとおり、何事も経験。判った?」

「まあ、どうしてもヤバイってなったら教えてよ」

「ちぇっ」

「行っちゃうの?」

「うん。また会おうね」




ヒソカが二言三言話すのを待つ間、

空を見上げる。

やっと会えるね。

もう、淋しいと思わなくて済む。

そう思えるだけで、今まで狂う手助けをしていた月が、

幸運のお守りのように見えた。




「また、要らない事する」

「ゴン達が混乱するのが面白いのさ」

「悪趣味」

「ありがと★」

「褒めてないよ」

!ちょっといいか!」

「うん?」

「先に行ってるよ◆」

「問題ない。磁力使って飛ぶから」

「また後で★」




フィンクスからのコンタクトを受け取って直ぐ、

呼ばれた彼等の元へと急ぐ。

皆は吃驚するだろうか。

ちょっとばかり有り得ない光景を思い浮かべて、噴出しそうになった。




「なあ、ヒソカってなんでココにいたんだ?」

「除念師を求めて」

「やっぱりかよ!!」

「ゴンが知ったら、全力で止められると思ったみたい」

「なんで?」

「クロロを復活させようとしてるから」

「気付けよ・・・・・」




しばしの沈黙と、耳を塞ぐ準備を。

森が震える。




「知ってて言ってくれなかったの!?」

「ゴン?勘違いしてない?あたしは旅団側だから」

「あ・・・・」

「戦いたいんだってさ。ヒソカの玩具を取れるほど、あたし強くないし」

「なるほど」

「クラピカにも言ったよ。クラピカは強いから、きっと勝てるって」

「根拠ねえだろ」

「まあね」




がっくりと項垂れはするけれどなんとなく、

復讐なんかと思っている彼女に感謝した。

きっと彼のココロから、怒りが掻き消える事など有り得ないのだろうけれど、

それでも、違った何かも見出したようだから。




はこれからどうするの?」

「皆のところに戻って、暮らすと思う」

「会えるよね?」

「あたしまたねって言わなかったっけ?」

「言ったな」

「言ったわさ」

「敵のカテゴリーなんて曖昧なもんでしょ」

「まあ、ヒソカがああだし」

「今度オレの島にも来てよ!!絶対気に入るから!!」

「うん。御呼ばれするの待ってる」




それじゃあねと、2度目の別れを告げて、

再会の約束をして、

は久し振りに、クロロの名前を口にした。




「磁力オン。クロロ・ルシルフル」




込み上げてきたのは、安堵。