あれから、また少し遠ざかるようになった。
難しい。
人との間合いをつめて殺すなら楽だろうに。
「」
呼びかけには応じれど、
こちらを見ない。
遊んでいたコルトピの髪をさらりと撫でて、何と返す。
「念を、覚えてみるか?」
「覚えた方がいいの?」
「役に立つ」
「じゃあ、うん」
嫌だとは、決して言わない。
「念がどういうものかは知ってるな?」
「うん」
「これから何をしようとして、お前が何をしなければならないかは・・」
「それも知ってる」
「なら、話は早い」
「団・・」
そんないきなりと、声をかけようとしたコルトピを遮って、
無理やりにこじ開けた精孔。
普通なら、ある程度の生命エネルギーが溢れる筈なのだが・・・・。
「え?」
「纏が出来てるってことか?」
「違う。オーラが少なすぎるだけだ」
を取り巻くオーラらしき物体は、
彼女の身体を伝ってゆっくりと地面を張っているだけに過ぎず、
さらさらと流れる其れは、まるで少量の湧き水だ。
消えてしまいそうなオアシス。
「纏・・・・って、これでいいの?」
「っああ」
いつの間にか流れなくなったオーラ。
少なすぎる。
「・・・?」
「何?」
「お前・・・・いや、何でもない。基礎からやっていくか」
それから基礎を覚えるまでに1週間。
練を1日持続できるまでにまた1週間。
「、お前化けもんだな」
「あたしが?」
「おう」
「フィンクスやウボォーの方が化け物っぽいよ?」
「見た目の話はしてねえよ」
「そうなの?」
「休憩?」
「うん」
微弱すぎるオーラに心配していた面々は、
あまりに早すぎる習得に目を見開くしかなかった。
はいと渡されたジュース。
ありがとうと微笑むのはもう、日課。
「減らない?」
「嗚呼」
「オーラの総大量が?」
「それはおかしいんじゃないかしら」
「おかしい。だが、今までの基礎は十分すぎるほどだ」
クロロの部屋では会議中。
勿論の念のことについて。
相当な術者となれば、消費していくオーラを限りなくゼロの状態で練を維持できる。
が、の場合、本当にゼロなのだ。
減りもしない。
けれど増えもしない。
「が異世界から来たのと関係があるのか・・・・」
「俺は違うと思うな」
「私もよ団長」
「多分パクと考えてる事一緒じゃないかな?」
「「今まで培って来た性」」
自分を抑える術然り、
今までの動向然り。
「心配する事ないよ団長」
「減らないという事は最強ということだもの」
「そうだな・・・・」
修行のときは割り切る。
プライベートには踏み込ませない。
自分には心配する事しか出来ないのだから。
2人の意見を聞いて安心したのか、
クロロはグラスと葉を手に取ると、
下でコルトピたちと談笑しているであろうの元へ向かった。
「、水見式をやるぞ」
「ん」
「お前まだやってなかったのか?」
「うん」
「何系だろうな」
「変化系か具現化系じゃない?」
「強化系だったらオレが教えてやるぜ!!」
『それはない』
「なんでだよ!!!」
ぎゃあすぎゃあすとまた喚きだす単純馬鹿を無視して、
はグラスへ手を翳した。
数秒後、水にぷかぷか浮いているのは、
「蜘蛛だね」
「しかもご丁寧に脚が十二本だよ?」
「が出したのよね」
「あたししか練してないし・・・・」
「具現化系か」
「ほら」
「ちぇ」
「ゴメンね?でも、ありがとウボォー」
ぱきん。
どぱあ。
ぽとっぽとっぽと。
・・・・・・・・・・。
「タオル・・・・持ってる?」
「はい」
「ありがと」
グラスが消え、溢れ出してしまった水。
ぽたりぽたりと机から滴る其れ。
「具現化よりの特質か」
「だったら、ぼくが見るよ」
「コルトピが先生?」
「うん」
「やったあ」
むか。
「その修行を1ヶ月続けろ。その後は俺が見る」
「判った」
どすどすと足音を鳴らして去っていくクロロを見つめる団員は、
少しばかり、子供な彼に溜息をついた。
「罪な女ね」
「意味が判んない」
「当然よ」
「パク?」
「団長が可哀想になってくるぜ」
「フィンクスにそう言われたらお終いだね」
「なんだとシャル!!」
「渡したくないなあ」
「コルトピ?」
「こっちの話」
「食事にしましょうか」
「手伝う」
まだ、皆の君で居ればいい。