「ホントにそれでいいの?」
「うん」
「ってそうゆうの好きだったんだ」
「意外?」
「まあ、ぼくもあんまりの事知らないからね」
「これに合う服買いたいな」
「盗ればいいのに」
「お金貸してもらう」
「そ」
具現化系の修行を始めて半月。
の腕に抱かれた継ぎ接ぎの一見おぞましい縫い包み。
「今日、ボノレノフ来るってさ。見せたら?」
「うん!!先戻ってる」
「転んじゃだめだよ」
いつから自分はこんな親みたいな感情になり始めたのだろう。
きっと愛しいんだろうけれど、恋愛の其れとは違う。
基礎体力をウボォーとフィンクスに見てもらっていたこの半月。
自分達には到底及ばねど、それなりに走れるようになって来た。
少し先を走るに追いついて、2人は中睦まじくアジトに戻るのだ。
ナイーブな団長が出掛けて、どんちゃん騒ぎになっているアジトへ。
「ボノ!お帰り!!」
「嗚呼」
アジトの扉を開けるなり、そこにいた包帯男へダイブした。
この場に団長が居なくてよかったと、
団員達は心底思ったらしい。
「見て。具現化したの」
「が?」
「あたしが」
「・・・・・・・・そうゆうのが趣味か」
「コルトピにも驚かれたけど、そんなに意外?」
髪もろくに梳かず、こちらに来た時に着ていたスエット。
キャミソールの上から団長から貰ったのだろうだぼだぼのカッターシャツ。
見た目は孤児。
「、服、欲しくない?」
「この子に似合う服欲しいって、さっきも話してた。パク、お金貸して?」
「盗ればいいじゃねえか」
「それも言われたけど、なんかイヤだから」
「は?」
「お金貸して。パク」
「いいわ。一緒に行きましょう。午後は空いてる?」
「うん!」
「俺も行くかな」
「ぼくは残ってるよ」
「フィンクスが行くなら俺も」
そう名乗りを上げたフィンクス、シャルナーク、ウボォーの3人。
けれど、やつれて帰ってきたその3人を見た瞬間、
女の(パクノダの)買い物に付き合うべからず。
その日、団員が誓ったことだったとか・・・・。
「こんなに要らないって言ったのに」
「あら、服はあっても困らないわよ?」
「あり過ぎだろ」
「何か?」
「ナンデモアリマセン」
「そう」
山と積まれた衣類云々。
断りはしても、押しには押されるだから、
これだけの買い物になったのかもしれない。
「とりあえず着替えてくる」
「そうね」
「フェイタンって今日、居たっけ?」
「お前知らないのか?」
「何を?」
「お前の部屋の真下、フェイタンの拷問部屋だぜ?」
「居るんだね。判った」
自分で選んだ上下を抱えて部屋へと赴いた。
その背中を見送って、
留守番組だった団員は、山々と積まれたその買い物袋を見て、
荒い息をしている3人を見て、
また、溜息をついたとか。
「フェイタン、フェイタン」
こんこんとノックをして返事を待つ。
答えてくれない確立は100%だったが・・・・・。
「なん・・・・・・お前誰ね」
「だよ。失礼なフェイタン」
「・・・・・・・・で?」
「鋏持ってない?包丁でも何でもいいけど、髪が切れるもの」
「紙?そんなもの手で切れば・・」
「紙じゃなくて髪」
シャワーを浴びてストレートになった髪。
蜘蛛、蝙蝠、髑髏、棺桶と並ぶボタン。
意外と細身な身体。
それにぴったりのカッターシャツ。
フリルがふんだんに使われた黒のミニスカート。
黒と赤のボーダーが、脚の白さを際立てて、
履いている黒のショートブーツには逆十字のチャームが揺れる。
別人。
フェイタンが抱いた最初の感想。
彼女がアジトに来てからあまり外に出なくなって、
なんだか気に食わないだけだったけれど。
「これでいいか?」
「十分。ありがとうフェイタン」
「ち」
呼吸を乱されるのがイヤで、
自分は自分でやってきたのに。
団長を取られた嫉妬か?
まさか。
ばっさばっさとロングの髪を切っていく。
綺麗に整えられたショートカット。
本当に別人だ。
「助かりました」
「その服・・・・」
「この子に合う服欲しかったから買って貰ったの」
ひょいっと出された継ぎ接ぎの縫い包み。
「カワイイでしょ?」
「(どこが・・・・・)」
「フェイタンこうゆうの好きじゃかったっけ?」
「ワタシ拷問好きなだけ。そんなものなんの面白みもないよ」
「そっか。残念」
共通点見つけたと思ったんだけどな。
開いた扉の音に反応した2人。
クロロが帰ってきたのだ。
すったすったと自分の部屋から去っていく少女をしばらく眺め、
もう一度舌打ちをすると、自分も階下へと足を向けた。