突拍子の無いのは慣れてる。
慣れているが、
シャンクス以上だな。これは。
「ルフィ、とりあえずモノ飲み込んでから、
フォークとナイフ置いて喋れ?」
「ふぉむしゅししべるば?」
「デザート抜きだぞ」
なんだと!!と叫んでから必死にはむルフィを見ながら、
ブルックというらしい、骸骨の能力について、
さらりと聞き流す。
顔に着いたタコ料理達を拭いながら。
何があってもおかしくないと言うことを、
この身で体感しているのだから、
今更何も驚くことはない。
鏡に映らなかろうが、陰が無かろうが。
「落ち着かないと話は聞けないぞ?」
騒ぎ出した若い面々を宥める。
「あんたはなんでそんなに落ち着いてんの!!!」
「人が獣になったり(変態になったり)、
スーパーマンみたいになるんだ。
現にこの船にだって何人か居るだろ?」
むしろ俺にとったら全員、ある意味有り得ない奴ばかりだ。
「実力のない俺から見ても、危害を加えそうにない」
「それもそうね」
「とりあえず座り直せよ」
「年の功、か?」
「フランキー、お前実は俺のこと嫌いだろ」
今のはかなりぐさっと来た。
立ち上がっていた全員を座らせ、
骸骨に話の続きを促した。
結局の所、信じるしかないのだろう。
なんでも有りだと思えば、勿論信じられる。
たとえそれが有り得なかったとしてもだ。
でもやっぱりこの世界の人は、
自分で歩かなければ、どうにも進めない事を知っている。
それを見てれば、
自分も進まないとなと思うわけだ。
なんて、が物思いに耽っていると、
突然叫びだしたブルック。
現れた半透明の、なんだか可愛らしい物体。
揺れて止まった船。
「なんかまた、非日常に巻き込まれたっぽいな」
「非日常なんてものではありません!
これは罠だったんですよ!!」
「止まってる船の前になんで島が現れるんだよ!」
「さあなあ」
「ログポースも反応してないわ」
「これは、遠いウエストブルーから来た島ですから」
「はあ?」
それではと、走って行ってしまったブルックに、
頑張れと心内で応援を申し上げて、
また飛び出していきそうなルフィの服の裾を掴んでおいた。
「とりあえず、様子見た方が良いと思うのは俺だけか?」
この提案に、どうやら皆々様のってくださるようで。
島に行かない面々がちびメリー号に乗ってはしゃぐ様を見ながら、
嗚呼、若いなあ。
とか。
「も行くだろ?」
「はいはい」
「よっしゃ!!」
「保護者は居ないと大変だものね」
「俺は保護者確定なのか?」
「あら、違ったの?」
「パパ役は勘弁なんだけど・・・」
そんなこんな言ってるときに聞こえてきた悲鳴。
降ろされた碇と、怪奇現象。
「俺は島に3人を助けに行ってくる!!
「サンジ!むやみに動くな!!」
「ほげぇぇぇぇ!!!!」
「だから言っただろ」
「うっっうるせえ!」
「あ〜あ〜、折角の美形が台無しだな」
思いっきり振り回されて、
叩き付けられたサンジの傍に座り、
冷やすものがその場にないので、
とりあえず自分の手を、紅くなった鼻とおでこに当ててみる。
「どうした?ほっぺまでぶつけたのか?」
紅く染まってきたサンジの頬に、
これが変態と同じ感情かもしれないことなど、
露程も疑わず、そっと手を這わす。
更に茹で蛸状態になっていく彼に気付いていないのだろうか。
だとすればには、眼科を紹介すべきだろう。
「もっっもう良いもう良い!!!」
「そうか。気を付けろよ?
好奇心旺盛なのは良いけど、自分の身体を大切にしないとな」
また子供扱い。
俺は、もう子供じゃねえってのに。
「あ!」
「ロビン?(なんてエロイ声出すんだよ。このお姉さんは)」
「何かに捕まって」
そのロビンの声を聞くのが早かっただろうか、
自分達の隣を、何かが通り過ぎたのが早かっただろうか。
獣の唸りが消えて、後ろを振り返ってみれば、
膝をついたまま、何かを投げたような格好で止まっている、
の姿が、全員の目に入ったのだった。