「(落ち着け俺落ち着け俺落ち着け俺)」
続々続々集まってくる、
政府の暗躍暗殺機関の面々。
とりあえず、自分がだと気付かれていない以上、
こちらから手を出す必要はない。
「あら。新しい子?」
「近づくなよ。彼奴の持っている武器は海楼石仕様だ」
「俺以外じゃ返り討ちだあ。ちゃぱぱ」
「そもそも、そんな警戒するほど強くないかもしれんじゃろ?」
「それもそうね」
「(そりゃそうだ)」
何処の馬の骨ともしれない男を、
たかだか海楼石ごときで警戒するとは、俺らしくもない。
だが、目の前の男から流れるこのオーラというか、
フェロモンというか・・・・。
なんだというのだ。
じっと此方を、
臆することなく見ていたその両の瞳のせいかもしれない。
殺気を駄々漏れにしていたというのに。
大きくなって良かったと思うのは、
何かと持たれる興味を持たれなくなったことか。
じっと見てたけど、
別に此方を気にしている様子は全くなかった。
嗚呼、怖かった。
ふと、顔を外へと向けた男。
揺れたのは、耳に付けていたイヤリング。
貝殻をそのまま付けていた其れはまるで、
海からの呼びかけに答えたかのようだ。
「どうかしたのか?ルッチ」
「いや」
まさか。
まったくもって俺の頭はおかしくなったようだ。
確かには、掠いたいくらいの力と容姿だったが、
あの平々凡々で、俺達の足元にも及ばないようなあれが?
有り得ない。
だが、あの・・・・。
「こらこら」
「ちょっと町を見て回りたいんだけど」
「まだ寝とらにゃならんよ」
「大丈夫みたいです。もう結構痛くない感じだし」
「兄ちゃんすごい回復力ね」
「お金もないですし」
「そんなこと気にしないで良いのに」
「いやいや、其処はちゃんとしないと。じゃあ」
ゆっくりと近づいてくるそいつ。
名前も知らないそいつ。
「お大事に」
「有り難う」
カリファの声は届かなかった。
記憶より低い声も気にはならない。
ただただ、
「でき・・・た・・・」
必死に自分の身体に薬を塗って、
包帯を巻いてくれたその小さな手。
安心したような笑顔が重なって。
「待・・」
閉まってしまった扉に、
中途半端な声をかけることしかできなかった・・・。
「嗚呼、怖かった」
何故声をかけたのかしれないけれど、
怪我を痛いと思える様になったのなら、
とても良かった。
栄えたような、栄えてないような、
それでも静かな町は、とても気持ちが良い。
「彼奴等が此処にいるって事は、
ルフィが近くにいるかもしれないって事で・・・」
かといって、ルフィが自分を仲間に入れてくれるかも分からない。
なんか面白い事しないといけないかな。
俺、そうゆうの苦手なんだけど。
「うん。とりあえず食費確保」
勢いで持ってきたバックの中身を確認したは、
あからさまにホッとした。
貰いすぎていたお駄賃が無事だったからだ。
これで入院費と治療費はなんとかなるだろう。
「しかし、もう出航してるよな。どうするか・・・・」
あそこでちゃんと前を向いて歩いていれば、
あんな事にもこんな事にもならなかったのに、
莫迦俺。
一生の不覚。
前を向いて歩きなさいと、
何処に転勤しても最初に注意されていたのに。
の頭にそんなことが過ぎったのは、
もう既に、誰かとぶつかり、尻餅をついた後だった。