「シネ。まじでシネ。あいついつか絶対俺の手でコロス。コロス」
「?」
「あ゛ぁ゛?」
「ごっごめん!!」
「おにいちゃん、どうしておこ・・っ!!」
「泣きで落とすのは褒めてやる、が、その顔で、それを、すんな」
思いっきり、少年ゾンビの首を絞め、
自分の目の高さまで引き上げたは、
その口の中へ無理やり、塩を突っ込んだ。
出てきた影が、の足元へとおさまる。
さっさとこのクソなんて倒して、
あの変体が。
ルフィに先急いでもらって、
あの変体がっ。
速攻で見つけ出して、
あの変体がっっ。
ぶっ殺してやる!!
「お前行けよ」
「は?なんで俺が!?」
「の事気に入ってんだろ?」
「気に入ってるってなんだよ!あいつは男だぞ!!」
「嬉しそうに赤面してた奴が」
「それを言うならお前だろうがマリモ野郎」
「なんだとぐるぐる眉毛!!」
「誰でも良いから行ってくれよ〜」
「怖い怖い怖い」
押し合いへしあいクルーがする声や、
敵方が、あまりの殺気に動けずにいる事なんか、
まったくもって聞こえないし、見えない。
ただ、幻聴のように、
いつも諫めてくれていた、彼の声が聞こえただけだ。
「?」
「なんだ」
「落ち着け」
「落ち着いてる」
「何処がだ」
「落ち着いてるよ」
「お前はいつも冷静で、人を見て、行動した。違うか?
だから、あの馬鹿船長に言い寄られた時、止められそうな俺を探してるんだろう?」
「・・・・・・・」
「それがお前の強みだ。
相手の弱点や性格を見抜く力がある」
「・・・・・・・」
「感情に任せて行動をとるようになったら気をつけろ」
「なんで」
「あの馬鹿船長と同じになってもいいのか?」
「嫌に・・・・・決まってるだろ!!!」
振り下ろされたハンマーと、砕け散った地面。
先ほどのまでの力の無さは何処へ行った。
「はあ・・・・・サンジ」
「なっなんだ!?」
「悪い、平手打ちしてくんねえかな?」
自分が悪いとわかってる。
わかっているけれど、この感情だけは止められない。
でも今は、止めて、考える時だ。
それが分かっているからこその、苦笑は、
憂い以外の何ものにもならない。
サンジの頬が赤く染まる。
「っ!」
「ゾロだと手加減してくれそうにないからさ」
そこで、
俯く、
なよ。
クソ野郎!!
ぱちんっとこ気味のいい音が響く。
手加減したにせよ、
紅葉型に赤くなっていく頬を、
形のいい指と掌で覆って、暫くは動かなかった。
「痛・・・かったか?」
「さんきゅうな」
なでられた頭。
上昇していく体温。
先ほどの可愛らしさがなくなってもう、
あの、頼れる顔になっている。
「待たせたな」
「まったくだ」
「動かなかったのは、お前の勝手だろ?」
「煩い!!」
「大切な友達の影、返してもらうぞ」
あの背中に抱きつきたいと、
考えていない人は、今ここにはいないと断言できる。
のちに某コックは、そう語ったという。