オーズに、モリアに、
あのフェロモンは通じないし、
ハンマーで打ち砕けるほど、彼は甘くはなくて。
どれだけ意気込んだって、所詮俺はこの程度だ。
嗚呼、痛い・・・なあ。
今目の前に広がってゆくのが、何処から出ている血なのか、
にはもう、分かっていなかった。
「ロビン!!」
勢いよく向かって行ったものの、
自分にできる事といえば、
モリア本体の動きを、少々止めるくらい。
あのでかい怪物相手に、通用する破壊力など持ってない。
影と入れ替わって、
ロビンの影を奪おうとするモリアに、
あの、針を投げつける。
沢山、失くしてしまった。
唯一彼と繋がれるものを・・・。
「大丈夫か?」
「ええ、なんとか・・・」
「まあ良い。奪えずとも、皆殺すまでだ」
モリア特有の、あの笑い声が、
やけに脳天に響く。
だが、ほっと一息ついている暇などない。
また、モリアがオーズの中に戻ったとゆうことは、
彼の手が伸びるということで。
「あぶねえ!!」
「くっそ!!」
必死だった。
怪我を、こんなぼろぼろの状態でいうのもあれだが、
これ以上、してほしくない。
スーパーマンじゃないんだろうお前ら。
サンジの蹴りが炸裂する。
夢中で覆いかぶさったロビン。
自分よりも強い。明らかに。
だけど・・・。
「チョッパー!!今のうちに運べ!!」
「おう!!」
担ぎあげられ、とりあえずのところに座らされ。
息が上がる。
血の味が広がってゆく。
「弱い・・・な」
「強いわよ」
「役に立ってない」
目の前で繰り広げられてゆく、
スケールのでかい、戦い。
小さい頃は、自分のものとして、
いかに見る事が出来ていなかったか、
心を抉られているような気さえしてくる。
「悪魔の実を食べたからとか、さ、じゃ、ないんだ」
「そうね。でも、あたしも身体がいうこときかないわ」
まるで、子供が駄々をこねているような。
無いもの強請りか。
強請るのは好きじゃなかった筈なのに。
なのに、今、スーパーマンのようなパワーが出てこればとか、
夢みたいなことを妄想してる。
「現実主義者だったはずなんだけどなあ」
「だからこそ、鷹の目に見染められたんだと思うけれど?」
「そうだと良いよ」
「あれルフィかしら・・・」
「無事だったみたいだな」
努力をしたつもりだった。
それなりに強くなったつもりだった。
少し、彼に、近づいたつもりだった。
遠くで、オーズの叫びが聞こえる。
「さ、迎撃の準備よ」
「止めるとこくらい手伝わないと。顔向けできない」
言う事をきかない体に鞭打つ。
骨が軋んでいるのがわかる。
「ルフィ」
「一緒に」
「嗚呼」
「ブルック、頼むな」
「分かりました!」
皆が一緒に、いる。
振り下ろしたハンマーと、彼の手では、
むしろ自分なんか必要ないんじゃないかと思うけれど、
彼が、そう、一緒にと、俺を、必要としてくれるから。
喜んで、微力にもならない力を貸そう。
微力になるように、トレーニング、しないとな。
「やった・・・か」
「が一緒にいたからだ」
「そっか。とりあえず向こう行くぞ」
「おう」
腕の中で笑うルフィの頭を、撫でてやった。
暴れまわる赤い髪が、見えたような気がした。