おいおい、鳩尾はないだろ。
掠れていく瞳。
目の前で何が起こっているのか分からない。
ただ、ほとんど太刀打ちできてないことしか分からない。
一瞬だと思った、真っ暗になった視界。
次に目を開けて、入ってきたセリフに感じた憤り。
「コックなら、また探してくれ・・・・!!」
それだけで立てた。
視界の端に映る、倒れているクルーたちが、
何が起きていたかを教えてくれる。
いわば絶体絶命か。
それでも、それでも、
ゾロが、サンジが、未来のあるお前等が、死んで、どうすんだよ!!!
「阿呆共!!!」
「っ!!」
「なっ!!」
急所くらい分かる。
怪我をしすぎている今ならなおさらだ。
もう動けないだろう。
意識はあったとしても。だ。
「死ぬとか言うな!一味がどうした!!
死んだらもうどうにもできないんだよ!
巡り会うことも、こっちから捜しに行くことも、捜されることも!!!」
目が霞んでいる。
それは、疲労の所為か。
怪我の所為か。
涙の、所為か。
「・・・・」
あの、ゾンビの子供に見えた。
大人の皮をかぶって、大人のふりをしてでも、
それでも甘えたい盛りの子供のように。
「。だと?」
「嗚呼、そうだよ。それがどうしたよ。とりあえずゾロ気絶しとけ!
誰かの首を持って帰らないとなんないなら俺が交渉する!!」
「アホか!!」
「アホじゃねえ!もう頭いっぱいいっぱいなんだっ!!」
「えばるところか!!」
「ううっ・・・・」
「ああ。あああ。とりあえず泣きやめ。な?」
立ってるのもやっとなのに、
こいつの涙は見たくないなんて・・・。
子供のように泣きじゃくる、自分よりも大きな体を抱きしめた。
「。か?」
「そうだよ。俺がだよそれがどうしたって・・」
「あの赤髪の捜しモノと同じ名前だな」
「十中八九その捜しモノは、俺、だけどな。
すげえむかつくから、今、あの、変体親父の名前、まじで、言うの、やめてくんね?」
あの、ハンマーで地面を粉々にした、
彼が帰ってきたような感じだ。
自分は、赤髪とかいうのが、
どれだけの実力を持っているのか知らない。
知らないけれど、彼の中に、大きく、
存在しているものなのだろうということだけはわかる。
負けたくない。
「ほう。なら立ち会いを許そう。
たったいまロロノアの首で手を打ったところだ」
「なっ!!!」
「見てろ」
黙って。
これが俺だ。
強がりで、誰よりも高みにありたい俺の。
唇を噛みすぎて、血が出たんだと思う。
長いようで短い時間は過ぎて、
俺によっかかったまま動かないゾロを抱きしめて、
ずっとずっと。
聞こえてくる悲鳴が、まだ頭で響いている。
何があったと聞かれても、
何もなかったと答えるしかない。
俺は、また、助けられた。