何故男同士なのにシャワーを断られたのか。
嫌われてるのか?
嫌いな奴の頼みは聞かないだろう。
なんて、もんもんと考えながらシャワーを浴び、
甲板に戻ったの耳に、
髪の毛から滴る滴にたかなった、変体共の心臓の音が聞こえる。
ではなくて、爆発音が響いた。
「なんでいきなり襲われてんだ!?」
「あら、でもいなくなったわよ?」
「なんだったんだありゃ。っていうかそこの人魚さんは?」
「あのな!こいつはな!!」
「ルフィ黙って。あんたじゃ説明にならないわ」
「うるせえ!には俺が説明するんだ!!」
「はいはい。よしよし。で、ナミ続けてくれ」
飼い主とはこのことだ。
扱いなれたように、
麦わら帽子の上から頭を撫でてやれば、
腰に回る腕と擦り寄せられる頬。
「さっき拾った人魚のケイミー。魚人島まで案内してくれるって」
「そうか。そこのヒトデ?は?」
「パッパグだ!」
「ん。宜しくな。ルフィ、そろそろ離れろ」
「いやだ!!」
「もう撫でてやんねえぞ」
「わかった・・・」
「良い子だ」
こんなやりとりも、既に見慣れた日常風景。
「襲われた理由は聞かねえのかよ」
「人魚を乗せてるんだろ?言い方は悪いが、人魚は高値で売れる」
「そうね」
「それで、今は何処に向かってるんだ?」
「この子の仲間がさっきの奴等にとらわれてるらしいから、助けに行こうって」
ざぶりざぶりと向かう先、
そこで懐かしい再会が待っていることなど露知らず。
「ゾロ、次お前浴びて来いよ」
「ああ?いい」
「いいって」
「時間がもったいねえ」
「じゃあ俺と入れば良かっただろ?」
「ばっ!!」
「てめえマリモ!!」
「なんだよサンジ。そこまで突っかかるくらい臭いか?」
「ちげえよ!!!」
「だよな」
俺も入りてえ!!
と船長が叫ぶ。
他のクルーからため息が漏れる。
「嗚呼。もう分かった分かった。とりあえず敵のアジトが見えてきたぞ」
「ももう少し緊張感を持て!!」
「緊張感って、サンジ、俺は男だし、風呂入るのになんの緊張感を持つ必要があるんだ?」
ごもっともな意見。
そうこうしている内に知れた、助ける相手の正体と、
果敢にも飛び込んでいく人魚。
好きな人のために真っ直ぐになれるのは、こいつ等の特権だと思う。
俺は、あいつが好き、なんだろうか。
この船での生活は楽しい。
楽しいのに物足りない。
足りないのはあの、眩しいくらいの赤色だ。
それは自分でも分かってる。
分かってはいるが、憧れ程度のものだから。
しかも俺は男だし。
そこが最重要項目。
だが最近、ぼーっとする時間が増えたのも事実。
今も、ルフィの戦闘開始の合図が響くまで、
少しばかり、あの思い出の中に、浸っている自分がいた・・・。