こうゆう胸騒ぎがする時は大抵、
彼らの誰かが、厄介事に巻き込まれる、
もしくは厄介事を引き起こしている時だ。
買い忘れそうになった銃弾を、予備も含め結構な量を買い、
武器屋の店主にお礼を告げ、
銃声のした方へと、少し早足で向かってみれば案の定、
天竜人と、横に倒れている緑頭と、
その緑頭に馬乗りになったピンク頭。
「・・・・・・・・・・・・誤解を招くな・・」
大方、あの世間知らずの彼が、天竜人の前で、
真昼間にもかかわらず、酒を煽りながら歩いてでもいたのだろう。
は一つため息をついた後、怒鳴られながら、
一体何に怒られているのか分からない子供と、
怒り方を知らない子供との、
まあ、言ってしまえば餓鬼のような切り返しをしている2人の間に、
割って入った。
「はい。其処まで」
「は?」
「」
「ゾロ、お前には後で、この世界の情勢云々を叩き込んでやる」
「その、大丈夫、なのか?」
「いや、別に病気とかじゃないし」
いきなり、自分とこの阿呆の間に割って入って来た命知らず。
長身も長身。
緑頭でさえ見上げているそいつ。
顔はまあ、綺麗だが、その辺にぽっといそうな雰囲気である。
だが、今の今まで当事者だった自分の存在を薄める力。
あまりにも自分を無視して、何やらな空気を作り始める2人。
阿呆に至っては明らかにそいつに気があって。
ホモか?ホモなのか??
どっちにしても、自分を無視することに対して怒りを感じ始めたから、
声を荒げさせてもらった。
「てめぇは誰だよ!?勝手に話を進めるな!」
「嗚呼、悪い。その綺麗な桃色の髪、ジュエリー・ボニーだろ?」
「そう・・・・だが・・・・」
「想像以上に可愛らしいな。
俺は。うちのクルーが世話かけてゴメンな?改めてお礼を言う」
「べっべつに!!!!」
天然垂らしのは、ジュエリー・ボニーを落とした。
ガサツだとしか言われてこなかった自分に、
可愛らしいなどとのたもうコイツ。
会話の内容からして麦わら一味なのだろうが、
賞金がかかっていないところをみると、ただの知り合いか何かなのだろうか・・・。
そんな会話の内容を、方向音痴が面白く思わないのは、
言わずとも当然のことで、
引かれたシャツに振り返ってみれば、
案の定、不機嫌そうな緑頭が、の眼に入ったのだ。
「どうした?ゾロ」
「打たれた奴を病院に連れていく」
「貫通してるのか?」
「嗚呼」
「だったら俺が看るよ」
自分を見てくれた事が何よりも嬉しい。
にやけている顔は、教育指導上よろしくないのは別にして。
鼻血が垂れていないだけマシだというものだ。
手際良く治療をしていきながら、
こうして、何事もなかったかのように接してくれる彼の優しさが痛かった。
「出来た。ん?帰らなくていいのかジュエリー・ボニー。あれ、仲間だろ?」
「わあああああわかってるよ!!!」
こちらに来ようか来まいか迷い、
うろうろしているそれなりの格好をした数名。
仲間、だが・・・を指さして、・とか言う奴は言った。
今の今まで、こいつに見惚れていたなんて言える筈もない。
内心で舌打ちをかましてから、
くるりと少々荒っぽく、踵を返そうとする。
「あ、ストップ」
「なん・・・っ!!!!」
顔に向かって伸びてきた、長くすらっとした指。
掬い取ったのは紛れもない、自分の頬から流れている紅。
それをぺろりと舐めとって笑ったそいつに、
鼻血を吹かなかった自分、偉過ぎんだろ!!
「女の子なんだから、顔は大事にしないと」
「!行くぞ!!!」
「分かった分かった」
「さっさと来い!!」
「そんなに引っ張るなって!こける」
「じゃあ、おぶってくぞ!」
「意味が分からんから」
自分の頬に手を当てて、茫然と彼らを見つめるジュエリー・ボニーが、
動き出すまであと数秒。
それを見つめていたルーキーたちの心の中に、
彼の名前が刻まれたのは言うまでもないだろう。