「ルッチ?止まれって」
「止まっている暇など無い」
「莫迦!傷開くだろうが!!あ・・・」
思いっきり怒鳴ってしまった。
ずっと歩いていたルッチの足も止まった。
その顔は真っ青で、
始めて会った時を彷彿させる。
身体が勝手に動くくらいの、病人。
「自分を顧みないとこ、変わってないな」
「っ!」
「ほら見ろ」
ぐらりと倒れそうになるルッチの身体を支える。
支えられる自分に今は凄く感謝した。
前は、ただただ、血を止めて、薬を塗って、
包帯を巻くことしかできなかったから。
「とりあえず、話はベッドで聞くな」
「!!!!!」
いやあ、ミホークに鍛えられてて良かった。
ルッチを軽々と抱き上げられるからな。
俗に言うお姫様抱っこという奴で、ルッチを運ぶ。
「」
「もうちょっとで着くから静かにしてろ」
「そうゆう・・・問題ではない」
「ほら、着いた」
「人の話を聞け」
まさか、その言葉を人から聞くことになるとは。
ここ数年、ずうっと彼奴に言ってきた言葉だ。
「脚の目星はついてるよ」
「?」
「さっきジャブラと歩いてる時に海軍の船が見えた」
「乗る気か」
「それしか方法がないなら。
仕事だって出来るようになったし、その辺りは当たって砕ける」
「」
「ルッチが心配するのも分かるけどな」
いつだって、俺のこと一番に考えてくれてたよな。
知ってるよ。
ホントは面倒見の良い保父さんタイプだって事。
「何か莫迦にされている気がするぞ」
「何が?」
「気のせいなら良い」
「ルッチ、無鉄砲さが無くなった」
「あの時は若かったからな」
「はは。俺も身体だけは若かった」
「可愛さの欠片もなくなったな。残念だ」
「おい」
「話が見えんぞ?」
「幼い頃って・・・」
「此方の話だ」
「秘密は良くないちゃぱぱ」
「(どれだけ仲良しこよしなんだCP9・・・・)」
何やら喧嘩し始めたCP9を、
少し椅子を引いて見守る。
あんな、風だったのだろうか。
シャンクスや皆といた少し前は。
「誰の所為でこうなった」
「は?」
「あの赤い髪に捨てられたのか」
「違う違う」
「偉く自信満々じゃの」
「彼奴が、小さかった俺を捨てる筈がない。
万に一つもない。ルッチの鼻が伸びるくらい無い」
「おい」
「誰の所為でもないよ。
そんなん考えたらしんどいだけだし、嫌だろ?」
「・・・・・」
「心配してくれてありがと。ルッチ」
おかしいのかもしれない。
ビジュアル的に絶対におかしい。
けれど、頭を撫でた。
小さい頃に嬉しかった覚えがあるから。
誰の所為でもない。
強いて言うなら自分の所為だろう。
波の様子も見ないで、向こうに飛び移ろうとした自分の。
穏やかな笑みでルッチを撫でるには、
周りのCP9の面々が、思いっきり引いていることなど、
見えていなかった。