「ん〜手持ちは大分あるにしても、だ」




目の前にどんっと構えられている、

海軍の帆が威圧的すぎて。

それにしても、財布の中にある金に溜息をついた。

ホント、どんだけ金持ちなんだよ。






「ルッチ、歩いて大丈夫なのか?」

「あの程度の怪我・・」

「昨日ふらついたじゃん」

「忘れろ。全て忘れろ」

殴ろうとすんな

「一生の不覚だ」




頭を抱えて悩むルッチなんて、珍しいことのこの上ない。

携帯があれば写メを撮りたい気分だ。




「あれ?ちょっと待て」

「なんだ?」

「海軍って、なんで此処に居るんだ?」

「麦藁海賊団がウォーターセブンにいるからな」

「・・・・・・・・・・はい?」

「知らないのか」

「いや、その麦藁海賊団は何処にいるって?」

「此処から列車で少し行ったウォーターセブンだ」

「まじで?」

「嘘など付いてどうする」




神様。

いるかわからないけど、神様、本当に有り難う。




?」

「こっからちょっとって言ったよな?」

「何処へ行く」

「ウォータセブンまで連れてってくれ」

「・・・・・・・・断る」

「じゃあ、行き方教えてくれ」

「それも断る」




折角、犯罪を犯さずに手元にやってきた宝を、

誰がみすみす手放すか。




「此処にいれば良い」

「なんか前と言ってること違うぞ?」

「気の所為だろう」




やっと犯罪でない域まで育ってくれたのだ。

よく見てみれば、可愛い顔立ちだと思えないこともない。

大人になったとしても、のまま。

そのことに、昨日、奴の腕の中で気付いたなどと、

絶対に言ってはやらないが。




「でもな、俺は探しに行きたいし。
ルッチだって、やりたいことあるんだろ?」

「ない」

「あのな。人生これからだぞ?」

「お前が言うと爺くさい」

「一応、俺の方が年下・・・あれ?」

「どちらでも良い。鍛え不足なところもあるだろう。俺が見てやる」




俺が見てやる。か。

沢山聞いてきた、俺を支えた言葉。




「ありがと。ルッチ」

「なっ・・」

「こうやって、御礼も言いたいしな」




そんな笑顔を見たら、助けるしかなくなる。




「変わってないのはどっちだ」

「ん?」

「(無意識なだけ余計に厄介か)」

「じゃ、俺行き方聞いてくるな」

「待て」

「ん?」

「俺が連れてってやる」

「でも、怪我痛いんだろ?」

「いや・・」

「痛むんだろ?」

「・・・・少し」

「だったら良いよ」

「いや、行く」

「ルッチ」




我が儘な子供を相手にするお母さんは大変だな。




「はい、ベッドに戻ろうな」

「はっ離せ!!」

「じゃ、自分で戻るか?」

「戻らん」

「お前なあ」

「着いて来い」

「はいはい」




抱き上げようとして払われた手を空にかざす。

指にとまったハットリに、苦笑を送った。