「ルッチ、帰るか」
「1人で帰れる」
「ああもう。途中で傷開いたらどうすんだって」
「開くわけがない」
「抱っこして連れて帰るぞ?」
「出来るものならやって・・」
ばたんっ!
「!!」
「は?ジャブラ?」
「また増えたじゃない!!!」
「危害を加えないのだから良いんじゃないかしら?」
「ロビン!落ち着きすぎ!!」
「なんでお前こんなとこにいんだ?」
扉を破壊して入ってきた狼を見やる。
隣のルッチも信じられないようで、
目を丸くして扉の方を凝視していた。
「海軍の船出ちまったぞ!」
「は?」
「お前、海軍の船に乗るんじゃねえのか?」
「嗚呼、つてが出来たから止めたんだ。
悪いな。何も言わなくて。わざわざ来てくれてありがと」
笑って狼の頭を撫でる。
勿論それに免疫のない麦藁海賊団。
常識人の口はぱくぱくと開閉を繰り返すのみ。
「なんだよ!折角教えに来てやったのに!!」
そうやって叫びながら、
ジャブラの頬は染まっている。
「そうだな。ゴメン。じゃ、ちょっと待ってろよ」
「あ?」
「サンジ」
「なんだ?」
「キッチン借りて良いか?」
「おっおお」
歩いていくに、
のそのそと着いていくジャブラにルッチ。
その姿はさながら、飼い主に懐いた犬と猫。
「サンジ〜〜」
「なんだよ!」
「レモン貰うぞお〜」
キッチンから聞こえてきた声に応答しながら、
あまりの奇怪さに頭が着いていかない。
「なんだ?、何作るんだ?」
「ルフィにも後でやるから」
手慣れた包丁捌き。
味見をしつつ蜂蜜とレモン汁を混ぜていき、
薄切りにしたレモンを漬けて出来上がり。
それを囲んで見やる男3人。
見られ慣れているかのように、は作業を進めている。
いや、実際に慣れているのだが。
「ほれ。明日になったら味染みてるだろうから」
「なんだこれ?」
「食えば分かるって。美味いから」
今日はホントにありがとな。
そう言って、ルッチにも一箱渡す。
「俺には?俺には?」
「今食うと酸っぱいから明日だって」
「待てねえ!!」
「はあ。じゃあ1個だけだぞ?」
「おい」
自分の手で摘んで、そっとルフィの口に持って行く。
勿論それを、あの船長が断る訳がなく、
当たり前のように口で受け取った。
「」
「なんだ?うん。味は良いな」
「!!」
「すっぺ!!!」
「だから言っただろ」
「聞け!!」
指に付いていたシロップを舐めとるに、
また考える人になってしまったルッチ。
ジャブラはジャブラで金魚のようだ。
シャンクスの教育は成功していたに違いない。
立派なフェロモン垂れ流し青年へと、
成長を遂げてしまっている。
「そういや、海軍ってどこに向かって発ったんだ?」
「そりゃ此奴等を連行するために決まって・・」
「不味いな」
幾人かを除く常識人の叫びが、
小屋の中に響いた。