「あ!あったあった!!」


シャンクスの問いに答えられぬまま、

さも、そこが目的地でしたと言わんばかりに、は声を上げた。

幾種類ものナイフをひろげるマーケットの一角へ走り寄り、

後ろからのっそりと着いてくる赤を振り返る。



「ちょっと、見ても良いか?」

のかいもんだろ」

「ありがと」



様々な形のナイフと睨めっこしながら、

さて、どう切り出そうかと、はまだ考えていた。

期待を、裏切った。

10年間、俺を探してくれていて、やっと、再会できて、

隣に立って、あの、あの景色を見られると思っていたのに。

いや、ここで諦めたら終わりだ。

何の為に命をかけたのか、分からなくなる。

よし。と心の中で呟いて、はゆっくりと深呼吸した。



「なあ、シャンクス、これとこれどっちが・・シャンクスっっ!!」



買う気なんてさらさらないが、

2種類のナイフを持ち上げて振り返ったの目に映ったのは、

物凄い勢いでこちらに向かってくる暴れ馬で、

このままでは、シャンクスに直撃コースだ。

彼がてだれで、あんなもの自分でよけられるなんて考えは、

の頭に1ミリたりとも過らなかった。

あの時届かなかった手。

あんな想いはもう、二度としたくなくて、咄嗟に手を伸ばして、シャンクスを引き寄せた。



「あぶな・・・・シャンクス、怪我ない?」



シャンクス?ともう一度、の自分を呼ぶ声が、

頭の中に木霊する。

嗚呼。やっぱりダメだと思った。





「え、どっか打った?いやでも、当たる前に避け・・」

「このやろうくあわいいなあ!オレの心配してくれてんのか?ん??」

「なにすっ、離せ!このっ!!」



さも、それが、10年前と同じ様に。

自分より上にある頭を抱きよせ、ぐりぐりと掻きまわす。

こわばっていた肩から力が抜け、今は自分の腕の中から、

必死で逃れようとしているをさらに強く囲ってやった。



「シャンクス」

「ん?」

「ゴメン」

「・・・・・なにがだ」

「強くなったつもりで、役に立てるつもりで、帰って来た」

「・・・・・・・・・・」

「覚悟して行った筈なのに、みっともなく泣き喚いた。ゴメン」



そんなことじゃない。

だが、意図的にこいつが話したい事を、話せるきっかけをつくったのも事実。

が、それで満足なら今は。



「気にすんな」

「でも、シャンクスだって俺の事避けてただろ!」

「あのなーいくらこの四皇様でも、時代を超えて来た同志が死ぬのはキツイんだぞ?」

「俺に、呆れてたんじゃ・・・」

「バカはなおんねえのか?」

「っ!シャンクスには言われたくない!!」



赤面して、そっぽを向く。

ほらな、10年前と、なんも、変わってねえだろ。

そう、思わせられたのなら・・・。



「ほれ、行くぞ。これ以上ベックを待たせたら先に船出されちまう」

「ああ。うん!」



気付かれていないなら。

隠し通して見せる。

こいつは、ちゃんと、成長させてやるんだ。



「シャンクス?」

「なんだ」

「ありがとう。俺を、信じてくれて」

「・・・・・・・・ああ」



寂しそうに見えたのは気のせいだろうか。

シャンクスが元に戻った事が何よりも嬉しくて、

その時の俺は、特に気にする風もなく、

外套を翻すシャンクスの後を追ったんだ。

憧れていた赤が、隣にいる事を許してくれたから。



トロイアの木馬