カルヴァドスの淹れてくれた、大好きなフルーツティーに口を付けながら、
はゆっくりと深呼吸をした。
先程まで、自分が暴れまわっていた跡を片付けるために、
走り回っているクルーの足音が、どたどたと、
今現在、大幹部達とミホークが集まっているキッチンに響いている。
「落ち着いたか?」
「ほんとごめん。カルヴァドス。ありがとう。助かったよ」
「銃の腕あげたな」
「ベンの鍛え方が良かったんだって」
「お前の・・」
「話の腰を折って申し訳ないんじゃが、、今までの事、話してくれんか?」
「ああ。うん」
海に流された事。
目が醒めたらこの身体になっていた事。
ルフィの船に乗っていた事。
そこでの日常と、事件。
「ウソップは!ウソップは元気だったか!!??」
「嗚呼。立派な狙撃手だったよ」
「そうかー」
「あのルフィがねえ」
「まあ、手配書を見ても、暴れまわっているのは明白だが」
銃弾のかすり傷で絆創膏だらけの赤髪は、
話に入れてもらえずふくれっ面。
「、これからどうする気だ?」
「俺の目的は、皆を見つける事だった。それがとりあえず達成された訳なんだけど」
「戻ってくる気があるのじゃな?」
「赤髪海賊団を抜けた覚えはないよ。
皆が許してくれるなら、俺は、この船でもう一度、旅に出たいと思ってる」
「歓迎しないわけねえだろ!!」
「ちげえねえ!!」
「料理の腕もあがっていそうだしな」
「だけど・・」
おそらく、に抱きつきたい衝動でうずうずしているのだろうシャンクス。
まあ、椅子に縛り付けられている今、それは叶わぬのだが。
「エースの事が、気になる」
途端、しんっと静まり返るキッチン。
「、言いにくい事だが・・」
「分かってるよ。助かる確率は五分五分、もしくはそれ以下」
「分かっているなら・・」
「ベン、俺はもう、色んな事に蓋をして、逃げる事だけは、したくないんだ」
皆が見守ってくれてる今はなと微笑んだに、うっとつまる。
「とゆうわけで、ミホーク、連れてってくれ」
「招致した」
「ダメだぞ!!!せっかく戻って来たのにまた・・」
「どうせ最後は関わろうと思ってたくせに良く言うよ。シャンクス」
「・・・・・っっ!!」
堪え切れなくなった自分に、微笑みを向ける。
何処か憂いを帯びて、幼かった頃にはなかった、成熟した性。
包まれているような優しさとあたたかさ。
なんて綺麗な・・・。
ふと気付いた時には、縛り付けられた椅子を気合いで砕いて、
にジャンプダイブをかまそうと・・
ごつんっ
「いーーーってええ!!何すんだ鷹の目っっ!!」
「それはこちらの台詞だ。、今日はもう遅い。明日出航するぞ」
「分かった。ありがとう。ミホーク」
10年の時を経て戻って来た。
会えなかった時間はあまりにも長い。
彼を見つけたクルー達の目を見る限り、
は本当に必要不可欠な存在だったのだろうと思うから、
ミホークは少し、席を外した。
積もる話もあろう。
ミホークが甲板に出て行くのと同時、
胡坐をかいて、頭をさすりながら、くっそうと唸っているシャンクスに近づいた。
かくんっと座り込んで、満面の笑みを向ける。
「シャンクス」
「なんだ!!胸に飛び込んで来たいならそう・・」
「あの、手配書は何だ?」
途端、船の気温が一気に下がった。
「誰の許可得て、写真引き伸ばしたりってかいつ隠し撮りした?ん??」
笑って問いかけてくれている筈なのに、有無を言わせない瞳と声。
10年は、長かったのだ。
「殺されても、文句は言えないよな?」
大暴れ2回目。
シャンクスの叫び声が、満天の星に吸い込まれて行った。
海の藻屑となれ