ヌクモリを忘れないよう、前線に立つというミホークに着いて行った。
砲台の後ろにかまえて、数時間かはたまた数分か。
にとって長いとも短いともとれる待機の時から一転、
既に戦争が、目の前で、始まっていた。
「落ち着いているか?」
「落ち着いてるって嘘つけるほど、豪胆じゃない。震えが止まらないよ」
凶器の渦が、自分を、包んでいるのが分かる。
小さい頃に、冬島で出会った記憶のある白ひげが、
背中に乗せてもらった不死鳥が、
精巧な雪細工をつくってくれたビスタが、こちらに向かってきている。
「ミホークはなんで、七武海に入ろうと思ったんだっけ・・・」
「暇つぶしだ」
「そっ・・・か」
ミホークのくれた、海楼石仕様のくないと、自ら購入した銃を、弄ぶ。
爆音と、剣のぶつかる音、叫び声。
阿鼻叫喚の中で、それがさも日常であるかのように肌で感じて、
ミホークと会話をする。
これが、見ると、そこに在るということだ。
涙が溢れそうになるのを、は必死でこらえていた。
「なあ、なんか聞こえない?」
「上からか?」
「そうそう。上から・・・え?は?」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「話題に事欠かかん男だ・・・麦わら・・・・・」
「ルフィ・・・そうか。うん。弟だもんな」
家族。だから。
弟だと、死んでも助けると叫ぶルフィの声を聞いて、後ろを振り返る。
何か心に落ちたように、前を見据えるエースと眼が合った。
微笑んだ様な気がしたのは、きっと、気のせいではない。
ミホークの隣で、繰り広げられる戦いを見ていたは、
目の前で急ブレーキをかけたルフィに、目を見開いた。
「!!??なんでここ・・うおっ!!」
「ちょっミホーク!!」
「こいつがここで倒れるか否かは運命が決める」
「やめろよ!!だってルフィは・・っ!!」
「ならば、お前が止めてみろ。」
敵と、自分との間に立ちふさがった事しかない黒刀が、
今、自分の方へ向いている。
威圧感と、殺気と、金色の眼光とともに。
「鷹の目、お前!!には手だしさせねえぞ!!」
「ルフィ!!ダメだ!!!」
俺じゃ。
俺じゃあ、ダメなんだ。
「分かったよ」
それを、貴方が望むのなら、
武器を、目の前の、師であり、父であり、支えてくれた貴方へと向けよう。
「ルフィ。エースを、助けてくれ」
「良い、構えだ」
数秒迷ったルフィが地を蹴って、前へと進むのを見届けて、
くないをミホークへとなげる。
当たり前の様にかわされたそれに紛れて、幾発か銃を放てど、当たる筈もなく。
幾度とないやり取り。
頬や、脚や、身体に、切り傷が増えて行く。
舌打ちしたは、振り切られた黒刀の斬撃をなんとか避けて、懐へと飛び込んだ。
「なあ、なんで?」
「・・・・」
「なんで、なんでだよ!!!!」
だって、エースは、ただ、家族が欲しかっただけなのに・・・。
ミホークの首元に当てていた、いや、
当てさせてくれていたくないが手から滑り落ちる。
からんっと言う音だけが嫌に響いて、頬を伝う水が、生温かい。
自分にはもう、ミホークの胸に両腕をついて、無慈悲な現実に涙を流す事しか・・・。
「見ろ」
「ふえ・・?」
間抜けな声と共に顔を上げれば、手錠の外されたエースとルフィが、背中合わせで立っていた。
ただただ、押しつぶされそうな何かに抗って、
此処に立っているだけで、精一杯な自分。
自分の命をなげうってでも、兄を助けようとする彼を、羨ましいと、
どこかまた、蚊帳の外で眺めていて、それが、とても悔しくて、悲しくて。
でも、数パーセントの可能性がそこで笑っている事が嬉しくて。
「やったあ・・・・」
「ここで喜んでいては、後で責められるやもしれぬな」
光り輝く奇跡を目の当たりにしていると思った。
ラピスラズリの結晶