さっきまでの、日差しの様な気持が嘘の様で。

いや、もう何が起こっているかすら、には分かっていなかったのかもしれない。

隣に立つミホークのマントの裾を強く握り、

なんとか息をしているだけで、精一杯だった。

様々なトーンで響いてくる怒号と、

信じて追いかけていた赤髪の声が頭の中で、ぐるぐると、回っている。





「・・・・・・エース・・」

「おい待て」



士気がふっと消えて、おそらく何か、ひとつ、終わったのだろう。

ミホークは、自分の傍を離れて行くの、

ただならぬ様子に、手を伸ばしたが、その手は、に届かぬまま、空を切った。



ふらふらと、倒れている人の間を縫うように進む。

気配の消し方が上手いなんてものではない。

この世にまるで、いないような、そんな歩き方で、

はそっと、エースの横にへたりこんだ。

倒れていた。

血まみれで倒れていた。

奇跡を見たんだ。

それもつい先ほど。

喜んだ。心の底から。



「エース」



!と、あの、元気な、太陽みたいな笑顔は、もう返ってこなくて、

ただ、穏やかな、微笑みだけが、冷たくなっていく身体が。



「エースっ!」



勿論、分かっていた。

こうなる確率の方が高かった事も、分かって着いて来た筈だ。

なのに、なのに。

の視界は、先程から揺れていて、瞳から零れる涙を止める術も・・・。







そっと肩に置かれた手。



「眠らせてやろうな」



声をあげて泣いた。

シャンクスの胸にしがみついて泣いた。

ベックやルウ達が白ひげと、エースだった冷え切った身体を船に運び込んでいる間も、

ずっと、ずっと泣き続けていた。
















いつの間にか船に乗って、いつの間にかついた島で、

2人の墓が出来あがる頃、ようやくも、受け答えが出来るまで回復したようだ。



「どうだ調子は」

「ベック」

「お頭と鷹の目が、な。心配してたぞ」

「ゴメン。覚悟出来てたつもりだったんだけど・・・」



まだまだ全然ダメだな。

なんて、憂いを帯びた顔で、涙をこらえてこいつは、

ここ3日、毎日飽きもせず、この墓の前にいる。



「なんかさ、強くなれる奴らと、そうじゃない奴らがいて、
俺はおそらく後者なんだ。でも、それでも皆みたいに、強くなれる奴らに、着いて行きたくてさ」



「だから、色々手出すんだけど、そりゃあ迷惑かけてばっかでさ」



突き進むためには力がいる事を知っている。



「エースを助けたいって、それなりに思ってて、でもミホークの力に頼ったって、
会いに行くことしか出来なくて、結局、ルフィの背中を押して、助けてもらうことしかできなかった」

「それが出来るだけでも、すげえことだと、お前は分かるべきだな」

「・・・・・・・仰る通り」



手向けられた花達の花びらが、風に乗って飛んでゆく。



「エース、幸せそうな顔してた」

「ああ」

「忘れないでいることしかできない」

「ああ。そうだな」

「俺は、隣に、立てて、いたのかな」

「あたりまえだろ」



涙を隠すために俯いた頭に手をのせて、数秒。

小さい頃に、エースがに向けていた瞳が、大切な者を見るそれだと、

勿論分かっていたから。



「行くか」

「・・・・・・・・・・・・・・・・うん」



Buona notte