天蓋付きのベッドで、眼が醒める。
差し込んでくる光が、良い具合に顔に当たって眩しい。
けれど、やわらかなそれは、
今まで浴びてきた木漏れ陽と少し似ていて、
目の前に現れた顔が、いつもの彼に見えたから、
いつもどおりの挨拶を・・・・。
「おはよ。ヒソカ」
ちゅっ。
真っ赤な顔して、後頭部から床と御挨拶すれば、
そりゃあ、たんこぶも出来ることだろう。
「なっなに!?」
「・・・・」
「クロロ?」
「お前、ヒソカに何を教わった」
寝ぼけていたとはいえ、自分のした行動が思い起こせぬ程ではない。
「別に、教わったわけじゃないよ。してくれない?って言うから」
「だからっておはようのキスをするやつがあるか!!」
「ここに在るけど」
「絶対にするな。俺以外には」
「最後の台詞は聞かなかったことにしてあげる」
何故この部屋にいるのかとか、
聞くだけ無駄だと、もう昨日の時点で見切りをつけてしまったは、
とりあえず顔を洗い、服を着替えた。
勿論、バスルームの扉の前にはクロノスを待機させてある。
昨日あんなになってしまいやがったから、
結局のところお帰りとまだ言えていない。
今朝の事は、まあ自分にも非がある・・・・のかもしれないから、
とりあえずは挨拶だ。
かちゃりと扉を開けて部屋に戻れば、
形容しがたい形相をして、携帯を耳に当てているクロロが其処に。
「ヒソカ!!に卑猥な事を教えるんじゃない!!」
『卑猥?嗚呼、挨拶の事かい?不意打ちじゃなければ良いって言ったのはだよ★』
「なんだと!?それは良いことを・・」
『ちょっと、今の団長の声じゃない?!』
『シャル!!電波追跡・・』
『してるか・・』
ぶちっ。
がっしゃん。
「・・・・・・・・」
やはり、止めにしようか。
粉々に砕けた携帯を横目に、肩で息をしているクロロを冷ややかな目で見つめた。
「嗚呼。終わったのか?」
「うん」
「朝食は其処だ」
「いつの間に?」
「さっきルームサービスを頼んでおいた」
「そっか」
凛としていれば、貴方は眩しい導なのにね。
机に並べられた珈琲カップを手に取る。
昨日拉致られて、結局何処にいるか判らず仕舞いだが、
綺麗な海が見えることだけは確か。
「いただきます」
こんがりふんわりやけたミルクロールに手を伸ばす。
クロロも新聞に眼を通しながら、スクランブルエッグをつついていて、
とても静かで、穏やかな朝。
だから、も、穏やかに微笑む事が出来た。
悩みなんてない。
だって貴方が其処にいるから。
「ねえ、ホームに戻らないの?」
「俺と2人きりがそんなに嫌なのか?」
「うん」
この世の終わりだ的な顔で、
フォークをころんころんっと落とす団長は、
至極滑稽で、笑えてしまった。
「嘘。嫌じゃないよ。でも、2ヶ月位したら皆のところ行こうね」
「・・・・・・・・・」
「おかえりクロロ」
「そうか!!そんなにまで俺を想ってくれていたのか!!
2人きりになりたいのなら、半年でも1年でも、いや、永久に一緒にいてやる!
俺の帰りを待ち侘びていたんだろう!!!そうならそうと早く言え。
ありえないと想いながらも、変体に気移りしたかと気に病んでいたオレの・・」
抱きついてきたクロロをクロノスに食べさせて、
ゲーム機の置いてあった町まで送り返してやった。
静かな朝食を再開させながら、想う事は一つ。
もし、帰ってきたら、
良い耳鼻科を紹介しよう。