「おはようクロロ」
「嗚呼」
「ご飯できてるよ」
「ルームサービスにすればいいだろう」
「作りたかったの」
高級ホテルの最上階。
セキュリティーは念でばっちり固め済み。
目覚まし時計は珈琲とベーコンの香り。
机に置かれたクロワッサンが、また、こうばしく。
「今日予定は?」
「別にない」
「古本屋さんがセールやるって言ってなかった?」
「そうだったな」
「行かないの?」
「行きたいのか?」
「・・・・・・まあ・・・暇だし」
貴方と行けるのなら。
きっと、たのしい昼下がりになる事なんて判っているから。
「昼を食べてからだな。午前中はのんびりすれば良い」
「そうだね」
至極嬉しそうに笑う君の、
その笑顔が、
究極の癒しなのだと、判ってはいないのだろうけれど。
つられてこちらも微笑んでしまうくらい。
「服の趣味変えたのか?」
「嗚呼。クロロ、白い方が好きって言ってたから」
「似合ってる」
「ホントに?あたしは絶対黒の方が似合うと思うんだけど・・・・」
肩空きの白いウサギ耳パーカー。
胸元から除くピンクのフリルが可愛らしく、
スカートの赤が良く映える。
だって、闇よりも雪の上の方が、血が映えるでしょう?
見詰め合う。
笑い合う。
ただ、愛し合う。
風が一陣通り抜けて、カーテンを揺らしていった。
ぷるるるるる。
「あ、もしもし?」
『・・・・・・・大丈夫なのか?』
『だって!?』
「平気だよ。皆が想像してるような事は起きてないから」
『起きていたら大事だ』
「後2ヶ月くらい帰らないと思うけど、心配しないで」
『心配はする』
『!あんた気をつけろって、あれほど!!』
『ボノばっかりずるい』
『そうだそうだ!!』
『莫迦!やめっ・・』
『姉様?』
「カルト?どうして?」
『代わってもらいました』
「あ、そう」
『早く帰ってきてね』
「出来得る限り」
後ろから聞こえるアンテナがだとか、ボノレノフの音楽だとか、
デメちゃんの吸引音だとか、壁の壊れたような感じとか、
まあ、無視すべき音はすべて無視して笑う。
「コルトピいる?」
『ボクじゃ役不足?』
「旅団の中じゃね」
『・・・・・・・・・判った』
「帰ったら一緒に修行しようか」
『はい。姉様』
『もしもし?』
「久し振り」
『帰ってきたらおしおきだね』
「お手柔らかに」
『で、どうしたの?』
「クロロの螺子が1本・・・・っていうかほぼ全部抜けちゃったみたいで・・・・」
『嗚呼、平気でしょ。なんとかなるよ。自分の貞操にだけ気をつけて』
「はあい」
『それじゃあ、切るよ』
『〜〜〜〜〜!!』
『シャル、耳元で叫ぶな』
『ワタシ何も話してないね!』
『フェイもご執心かよ』
『脳味噌筋肉莫迦には言われたくないよ』
『なんだとコラっ!』
『待ってるわ!』
『団長なんて殴っちゃえばいいから』
『ホントに気をつけなよ!!』
「了解」
クロロのいない間に新しく買った携帯電話。
その向こう側に皆を感じることが出来る。
楽しい時間を過ごしたは、今日はやけに静かなクロロの元へと歩いて行った。
「クロロ何して・・・・・・・・」
難しそうな古書を読みふけっているかと思えば、
それを見ながら、にやけているのは気のせいではなさそうだ。
「。ダメだぞ。朝からなんて。それはダメだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
くるりと踵を返したは、
そのまま部屋の扉をパタンと閉めた。
変態菌に感染しないために。
どうやら、彼は患ってしまったらしい。
妄想癖という名の不治の病。